進行胃癌に対する手術適応は慎重に考慮すべきである。一般的に予後規定因子と考えられているリンパ節転移や腹水細胞診(CY)の状況などに加えて、末梢血中に存在する癌細胞(末梢血循環腫瘍細胞:Circulating Tumor Cells:CTCs)の同定は、あらたな予後因子の候補である。 今回の研究では、Cell Search(a semi-automated immunomagnetic separation system)を用いて、137人の進行胃癌患者末梢血中のCTCsの陽性率を前向き研究として測定した。そのうち123人の患者で腹水細胞診(CY)の情報も得られた。これらの患者データから、CTCsおよびCYが、治療効果判定のための、胃癌患者の無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)の予見因子となりうるか否かを検討した。 25人(18.4 %)の患者ではCTCsが陽性であった。CTCs陽性であった患者群では、低分化癌や遠隔転移症例の頻度が高かった。CTCs陽性群のPFSは陰性群と比較して有意に短かった(hazard ratio 2.03; P = 0.016)。123人の患者による多変量解析では、CTCs、CY、PS(performance status)および肉眼的転移の有無がPFSに影響を与える独立因子であった。治療によりCTCsおよびCYが陰転化した患者では、長期的PFSが得られた。 CTCs陽性は、進行胃癌における独立したPFSの規定因子である。集学的治療の患者選択を行うことで、CTCsは有益なbiomarkerとなりうる。CTCsおよびCYを組み合わせて評価することで、根治手術をおこなうべき患者群を選択する際の情報として有益となる。
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