研究実績の概要 |
緒言:近年、結腸直腸癌は増加傾向にあるが、転移巣をコントロールすることで予後が延長できることが知られている。多様化している癌治療をより個別化することで、治療効果、そして医療経済の点からも、効率がよく質の高い治療を行うことが可能となる。末梢血液中を循環しているcell-free DNA(cfDNA)、その中でも、正常細胞に由来する短鎖cfDNA と癌細胞に由来する長鎖cfDNA の比であるintegrity を定量評価することにより、結腸直腸癌の予後予測と転移巣に対する化学療法の効果予測を高精度に行うことである。 対象と方法:2009年9月から2012年11月に初回化学療法としてフッ化ピリミジン系薬剤とオキサリプラチンによる化学療法が開始された88人の進行再発切除不能大腸癌の患者。初回化学療法施行前の血漿検体を用いて半定量real time PCRを用いてcfDNA integrityを測定した。 結果:平均年齢は63.5歳で男性47例、女性41例であった。切除不能転移巣は肝58例(65.9%), 肺28例(31.8%), リンパ節23例(26.1%)腹膜播種8例(9.1%), その他7例(8%)であった。最良治療効果判定ではCR1例、PR53例、SD33例、PD1例であった。無増悪生存期間中央値は236日、全生存期間中央値は581日であった。cell-free DNA integrity低値群は高値群と比較し有意に無増悪生存期間の延長を認めた(254日 vs 184日, HR 1.93 (95% CI 1.06-3.52), p=0.03)。 結論:血漿中cell-free DNA integrityを測定することにより進行再発大腸癌に対する化学療法の予後予測因子となりうる事が示唆された。
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