研究課題
本研究は、予後不良な肝細胞癌を対象として、癌幹細胞 (CSC) を解析することで、肝内転移による再発の抑制に結びつける。近年、上皮間葉系移行 (EMT) や癌幹細胞 (CSC) が転移・再発に重要と考えられている。また、CSC は抗癌剤・放射線治療に対する抵抗性を有しており、癌の根治のためにはCSC を標的にした治療法が求められている。本研究では、高い転移・浸潤能を有する低分化型由来の細胞株から独自に誘導したCSC 表現型を示す浮遊細胞塊 (Sphere) を解析した。前年度までに、2種類の低分化型HCC由来細胞株 (SK-HEP-1及びHLE) からSphere細胞を誘導し、これらSphere細胞がCSCの特徴であるstemnessマーカーの亢進、抗癌剤耐性能の亢進を示すとともに、肝転移能の亢進も示すことを明らかとした。また、Sphere細胞と親株との比較をmRNA, microRNA, proteinに関する網羅的解析を用いて行い、Sphere細胞に特徴的な発現プロファイルを得た。また、上述のSphere細胞における発現プロファイルを臨床サンプルにおける発現プロファイルと統合して解析を進めた。その結果、Sphere細胞にて発現が亢進し、臨床サンプルにおいても術後2年以上無再発群と比較して術後1年以内の早期再発群にて発現が亢進した遺伝子を4つ同定し、これらの知見について、HCCの再発予測マーカーおよび転移抑制の治療標的として特許出願を完了した。さらに、mRNA発現について、誘導癌幹細胞および臨床サンプルを用いてRNA-seqにより解析を行った。その結果、転移能亢進を示すSphere細胞において、これまでほとんど注目されていなかったCD44 variantのshort-tail型の発現上昇を見いだした。また、臨床サンプルからの結果と統合して解析した結果、新たに1つの標的oncogeneを同定した。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件)
Cancer Biology & Therapy
巻: 16 ページ: 307-316
10.1080/15384047.2014.1002357.
Gan To Kagaku Ryoho
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