研究実績の概要 |
1)まずヒト大腸癌におけるSPINK1の発現を解析するために、大腸癌切除標本を用いてSPINK1の免疫組織化学染色を行った。226症例中124例(55%)でSPINK1が発現していた。さらにSPINK1は分化型および、より進行度が高い症例で有意に高発現していた(p<0.01)。 2)次に大腸癌細胞に対するSPINK1の増殖促進活性を検討するために、大腸癌細胞株にSPINK1をターゲットとした small interfering RNA(siRNA)を導入し、SPINK1の発現を抑制した。また、ゲノムDNAを改変したminigeneを作製し、細胞内へ導入することでSPINK1の過剰発現系を作成した。まず4種類の大腸癌細胞株(Colo205,HCT116,HT29,SW620)の通常培養下でのSPINK1の発現をRT-PCRにて検討した。細胞によりその発現に差があり、Colo205,HT29での発現が強かった。そこでColo205にSPINK1のsiRNAを導入し、その発現を抑制させると細胞数は有意に減少し、SPINK1の過剰発現によって細胞数は有意に増加した(p<0.05)。SPINK1のマウスホモログであるSpink3のヘテロマウスにアゾキシメタンとデキストラン硫酸ナトリウムを併用して炎症関連大腸癌を発癌させたところ有意に腫瘍個数が減少することを既に昨年度報告している。以上よりin vitro, in vivoの実験系にてSPINK1/Spink3が大腸癌細胞の増殖に寄与する可能性が示唆された。 3)Spink3大腸癌組織での発現解析を行うために、Spink3lacZ/+マウスを作製し、このマウスに先の方法にて大腸癌を発癌させた。癌部の上皮にβ-Galactosidase活性を強く認め、Spink3の癌部での発現を確認した。
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