研究実績の概要 |
TFF familyにはTFF1~3が存在し、消化管粘膜の防御・修復に関わるとされている。近年では消化器癌を中心にその発癌や進展とTFF familyの関係が注目されている。 TFF1は胃癌特異的な癌抑制遺伝子とされているが、その発現制御機構については様々な報告があり詳細は不明であった。我々は、TFF1プロモーター領域に22個のCpGサイトが存在することに注目し、胃癌細胞および胃癌組織についてバイサルファイトシーケンス法によりTFF1のプロモーターメチル化状況を解析した。その結果、TFF1発現がメチル化によって制御されており、さらには胃癌切除例においてTFF1低発現例(おそらくメチル化されている症例)は高発現例と比較して有意に深達度が深く、予後不良であることを明らかとした。(Tanaka T, Nakamura J, et al. Int J Oncol 2013; 42: 894-902.) 以上の結果については、「胃癌のバイオマーカーとしてのDNAメチル化の現状と今後の展望」についてまとめたレビューの中でも記載した。(Nakamura J, et al. World J Gastroenterol 2014: 20: 11991-12006.) また、大腸癌組織154例を用いて、TFF1, 2, 3の発現をRT-PCRおよび免疫組織染色で評価し、臨床病理学的因子との関連を解析した。TFF1および2については、大腸癌において臨床的意義を見出すことができなかったが、TFF3については、高発現例が低発現例と比較して有意に予後不良であり、診断時に遠隔転移を有する頻度が高いことが明らかとなった。さらには、TFF3高発現例は、たとえ根治切除を行っても術後早期に遠隔転移再発をきたしやすく、TFF3は大腸癌において予後マーカーおよび再発予測マーカーとなる可能性が示唆された。(Morito K, Nakamura J, et al. Int J Oncol 2015; 46: 563-568.)
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