研究課題/領域番号 |
25861203
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
今村 裕 熊本大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70583045)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 食道腺癌 / 食道胃接合部癌 / FGFR2 / 遺伝子増幅 / 分子標的治療 |
研究概要 |
平成25年度に予定した研究として、まずFGFR2の免疫染色を行った。染色のスコアリングを、①negative, ②weak、③moderate、④strongとして評価し、①②をFGFR2 low expression群、③④をhigh expression群として、食道胃接合部癌101例を用いて臨床病理学的因子との相関関係を検討した。High expression群は46例(46%)、Low expression群は55例(54.5%)であった。High expression群は、low expression群に比べて、進行した深達度(P=0.0002)、リンパ節転移(P=0.0004)、遠隔転移(P=0.0040),リンパ管侵襲(P=0.0001)、静脈侵襲(P=0.0015)と強い相関関係を示した。Logistic analysisでは、FGFR2 high expressionは遠隔転移を有意な関係を持つ傾向にあった(P=0.055)。さらに、生存解析において、High expression群はLow群に比べて、有意に予後不良であった(P=0.0375)。以上より、FGFR2は食道胃接合部癌の悪性度と密接な関係を有することが明らかとなり、有望な治療標的となると考えられた。 次に予定していた研究として、in vitroでのFGFR2の意義を検討した。食道腺癌の細胞株として、OACM5.とSK-GT-4を購入した。Western Blottingにて両細胞株ともFGFR2を発現しているが、OACM5.1により強い発現を認めた。OACM5.1の細胞株を用いてFGFR2のsiRNAを行ったところ、細胞のproliferation、invasionが進行することを確認した。以上より、in vitroレベルで、FGFR2が食道腺癌の悪性度の深くかかわっていること事が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々が立てた仮説通り、FGFR2が食道腺癌に悪性度の進行と深く関与していることが、臨床検体、細胞株を用いた研究によって証明されたことから、本研究は順調に進展していると考えれらる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、FGFR2のgene amplificationがFGFR2の高発現の主たるメカニズムであることを、臨床検体および細胞株を用いた実験で証明する予定である。現在Copy number assay(Applied Biosystems)へ向けて準備中である。100例近くのパラフィン包埋切片からDNAを抽出しており、臨床サンプルにおいてCopy number assayの実験系が確立できるかどうかの検討中である。FISHによる確認も行う予定である。最終的にFGFR2のgene amplificationが臨床的に食道腺癌-食道胃接合部癌のどれくらいの割合を占めているのかを検討し、FGFR2タンパク発現程度との相関性を検討する。 FGFR2の下流のメインシグナルを解明すべく、FGF7によってFGFR2 pathwayを活性化させる系、そしてそれをsiRNAで抑制し、Akt-mTOR、ERK-MAPK、JAK-STAT系のいずれが重要な活性化系であるかを主にWestern blottingを用いて確認する。同時にFDFR2を制御するmiRNAの検索も視野に入れて実験を進めたい。 FGFR2が食道腺癌-食道胃接合部癌の治療の標的となるかに関しては、pan-FGFR inhibitorであるAZD4547や、FGFR2 selective inhibitorであるBAY117947を用いて、その有用性について検討することを予定している。同時にこれらの実験系がin vivoで同様に有用であるかも検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品について、当初の予定より比較的安価にて購入できたため。 今後は、臨床検体および細胞株を用いた実験を進めていく予定であり、研究費の多くはその消耗品購入費用に充てる予定である。
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