研究概要 |
【はじめに】VSNL-1が大腸癌の悪性化に関わる分子であることを、大腸癌細胞株を用いて証明するとともに、大腸特異的にVSNL-1を過剰発現するマウスを作製して、VSNL-1の個体レベルでの機能を解明する。同時に、3年の研究期間に、癌の予後因子であるリンパ節転移の機序や遠隔転移の有無とリンパ管新生との関連を分子生物学的手法、免疫組織学的手法、網羅的遺伝子解析、および電子顕微鏡を用いた形態学的手法を用いて解明する。初年度は当教室で研究している大腸癌および胃癌細胞における糖鎖に着目し、リンパ節転移や遠隔転移に関連する糖鎖研究を行った。【方法】53例の大腸癌組織・60例の胃癌組織および非癌部組織を使用した。組織より抽出した膜タンパク質をBCA法にてタンパク質定量し、cy3で蛍光標識した。糖鎖を認識するレクチン45種類を固層化したレクチンアレイ(GP BioSCIENCES)を使用して糖鎖プロファイリングを解析した。腫瘍部/非癌部のシグナル比を算出し、臨床病理学的因子との関連を検討した。【結果】大腸癌リンパ節転移陽性症例は、陰性症例に比べ、有意にレクチンTJA-Iのシグナル上昇、及びPHAE,DSA,STL,MAHのシグナル低下を認めた。一方、リンパ管侵襲陽性症例では陰性症例に比べ、有意にレクチンTJA-I,HHLのシグナル上昇、EEL, Jacalin,MPAのシグナル低下を認めた。一方胃癌ではリンパ節転移陽性症例は、陰性症例に比べ、有意にレクチンMAL、SNA、SSAのシグナル上昇、及びDBA、GSL_I_A4のシグナル低下を認めた。一方、リンパ管侵襲陽性症例では陰性症例に比べ、有意にレクチンMAL、SSA、HHLのシグナル上昇を認めた。【まとめ】大腸癌のリンパ節転移、リンパ管侵襲に有意に相関するレクチンを同定した。また同様に胃癌のリンパ節転移およびリンパ管侵襲の存在に有意に相関するレクチンを同定した。
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