研究実績の概要 |
【はじめに】VSNL-1が大腸癌の悪性化に関わる分子であることを、大腸癌細胞株を用いて証明するとともに、大腸特異的にVSNL-1を過剰発現するマウスを作製して、VSNL-1の個体レベルでの機能を解明する。同時に、3年の研究期間に、癌の予後因子であるリンパ節転移の機序や遠隔転移の有無とリンパ管新生との関連を分子生物学的手法、免疫組織学的手法、網羅的遺伝子解析、および電子顕微鏡を用いた形態学的手法を用いて解明する。本年度は昨年度に引き続き当教室で研究している胃癌細胞における糖鎖に着目し、リンパ節転移や遠隔転移に関連する糖鎖研究を行った。胃癌の検討ののち引き続き、同様に大腸癌においても同解析を行う。【方法】60例の手術標本である胃癌組織および非癌部組織を使用した。組織より抽出した膜タンパク質をBCA法にてタンパク質定量し、cy3で蛍光標識した。糖鎖を認識するレクチンを固層化したレクチンアレイ(GP BioSCIENCES)を使用して糖鎖プロファイリングを解析した。腫瘍部/非癌部のシグナル比を算出し、臨床病理学的因子との関連を検討した。【結果】再発症例(19例)は、陰性症例(41例)に比べ、有意にレクチンUEA_I, AOL, AAL, BPL, EELのシグナル上昇、及びLCA, MAL_I, SNA, TJA-1のシグナル低下を認めた。この60例の臨書病理学的因子をもとに再発に関連する因子の解析を行なった。結果は、リンパ節転移の有無、BPLシグナルレベルが再発規定因子であった。BPLがhigh levelのものはlowと比べrelative riskが5.310 (1.086-25.957)であった。【まとめ】胃癌のリンパ節転移を含む再発の有無に有意に相関するレクチンを同定した。このうちBPLレベルは、再発に有意に相関することがわかった。本研究成果は2015年Surgery Todayに報告した。
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