研究課題/領域番号 |
25861208
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
穴澤 貴行 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (90566811)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 移植・再生医療 / 糖尿病 / 外科学 / 膵島移植 / 小胞体ストレス |
研究概要 |
膵島移植はインスリン依存状態糖尿病根治の可能性を有する低侵襲治療法として確立が期待されているが、膵島分離・移植プロセスでの膵島障害による膵島の喪失が不可避で、この治療の定着の大きな障害となっている。膵島分離・移植プロセスにおけるClイオンチャネルによる細胞容積調節および小胞体ストレス応答の両機構を把握・制御し、膵島細胞の「恒常性維持」を達成し膵島の細胞死および喪失を回避することを目的とした。 まず、膵島分離過程でのClイオンの移動と細胞容積変化の経時的観察を行い、膵島分離環境ではClイオンの細胞内流入が惹起され、ネクローシス型細胞死が起こり得る環境であることを確認した。また、膵島分離・培養後の膵島収量およびViabilityの基礎データの取得のため、ラットから膵島分離および3日間の培養を行ったところ、従来法のViability assayにて確認されるviabilityは維持されるものの、培養後の膵島の消失が確認され、またその消失は培養中に起こるネクローシス型細胞死が関与することが確認された。続いて、膵島分離、培養によって小胞体ストレスシグナルがどのように活性化するかをWestern blot法で解析した。小胞体ストレスセンサーとして同定されている3種の小胞体膜貫通タンパク質(IRE1アルファ、PERK、ATF6)に注目し、それぞれの上流、下流のタンパク質発現の変化を検討したところ、膵島分離直後では、PERK経路の小胞体ストレス反応(UPR)の関与が示唆され、培養時にはATF6経路のUPRが関与している可能性が示唆された。これらの結果より、膵島分離中のClイオンチャネル制御と、培養中の小胞体ストレス制御により、膵島の恒常性維持を図りうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵島分離・移植プロセスにおいて、Clイオンチャネルによる細胞容積調節が必要であるのは膵島分離過程で、小胞体ストレス応答の制御が必要であるのは分離後培養中であることが示唆される結果が得られつつあり、膵島細胞の「恒常性維持」の達成に向けた手がかりは解明しつつある。一方、培養中に惹起される小胞体ストレスは、予想よりは小さなストレス変化にとどまっており、さらなる確認作業が必要と思われた。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体ストレス応答の変化が乏しいと判断した場合は、低酸素培養や各種サイトカインの 添加など、ヒト膵島分離で想定されるさらなるストレスを負荷する実験を加える。 また、Clイオンチャネル阻害および小胞体ストレス応答制御による「恒常性維持」が細胞死を回避しうるかどうかの検証を行う。膵消化の際にはClイオンチャネル阻害が有効であると思われるが、さらに他のステップで有効な場面がないかどうか検討する。さらに、N-Acetyl-L-cysteine およびL-glutathione等を膵島分離あるいは培養へ添加し小胞体ストレスの緩和を図る。実験結果に応じてその他の制御方法を追加する。この介入によって、最も細胞死を抑制出来うる条件を明らかにする。
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