研究課題
われわれは、ES細胞やiPS細胞を含む培養液をdishの蓋に吊り下げて行う懸垂培養Hanging drop cultureで胚様体を形成し、この胚様体を用いて、粘膜、平滑筋、ICC、神経細胞などの三胚葉系を有する腸管特異的な組織で構成される蠕動運動を呈する腸管臓器の分化誘導を以前より行ってきた。しかしながら分化誘導された腸管組織は、胎生期に近い腸管構造で、血管、リンパ管といった脈管系が存在せず、in vitroでの長期培養は困難であり、移植用腸管として使用できる状況にはない。一方で脂肪由来幹細胞(ADSC:Adipose-derived stem cell)は、血管新生因子であるVEGF(Vascular endothelial growth factor)、抗アポトーシス作用を持つHGF(Hepatocyte growth factor)などを産生し、移植した細胞の生着を促進するという特徴を持っている。またADSC自体は低酸素状態でVEGFとHGFの産生を上昇させることもわかっており、虚血領域にても血管新生するというメカニズムが考察されている。ADSCの血管新生因子の産生と、ADSC自身が有する血管内皮細胞への分化能を有する点に着目し、iPS細胞と共培養することで、血管構造を有する腸管組織の分化誘導を試みてきた。しかしながら、さまざまな比率でiPS細胞とADSCを共培養したうえで胚葉体の作成を行ったが、iPS細胞単独で行うより、胚葉体への誘導効率が低下した。そこで、通常はiPS細胞単独で胚葉体を作成し、付着培養を行って腸管分化誘導を行うが、付着培養の際に血管新生を誘導するべくADSCとの共培養を行った。しかしながら、血管構造を確認することはできなかった。よって、in vitroのみで分化誘導された腸管組織を長期培養し、移植可能となるまでの組織を誘導することはできなかった。
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