研究概要 |
癌の増殖・転移において血管新生が重要な役割を果たしており、数多くの血管新生を抑制する分子が報告されている。Ataxia telangiectasia mutated(ATM)はこの内の一つであり、ATMを欠損させたマウスの網膜で血管新生が抑制されることや腫瘍内での血管新生が抑制されることが分かっている。またATMは癌の浸潤、転移に関与するEpithelial–mesenchymal transition(EMT)に関連する代表的な遺伝子であるSnailの発現を制御することが知られている。本研究ではATMにより誘導される腫瘍血管新生がEMTを介する癌転移形成のメカニズムにどのように関与しているかを解明することを目的とし、実験を計画した。 まずヒト大腸癌細胞株(HT29, CaCo2, SW480, WiDR)を用いて、ATMおよびEMT関連マーカーの発現(SNAIL, SLUG, N-cadherin, E-cadherin etc)をRT-PCRおよびWestern Blot法を用いて測定した。その結果、HT-29およびWiDRはATMが比較的高い発現を認めた。EMT関連マーカーもこの2つの細胞株では比較的高い発現が見られた。 TGF-βはEMTを誘導することが知られている。そこで、上記ヒト大腸癌細胞株にTGF-βを暴露させて、EMTが誘導されることを細胞形態、スクラッチアッセイによる細胞浸潤、EMT関連マーカーの発現変化に確認した。またこのEMT誘導によりATM自体の発現の変化をRT-PCRおよびWestern Blot法を用いて評価した。この実験は現在、進行中であり、2014年度には結果をまとめることができると考えている。 今後はさらに、ATMをshRNAを用いてノックダウンした細胞を作製し、これにTGF-βを暴露させた際のEMT誘導に関して検証していく予定である。
|