研究課題
本年度の研究で、C57BL/6マウスにToll like receptor-9 (TLR9) agonistであるCpG-ODN1826とD-galactosamineを投与することで、致死的な急性肝炎を誘導するモデルを確立した。この急性肝炎モデルにおいて、血漿中でTNFα・CCL2などの炎症性サイトカイン/ケモカインの上昇を認め、肝臓の病理所見では肝実質や脈管周囲に多くの単核球浸潤を認め、肝障害が誘導されていることが明らかになった。さらに、このモデルの生体内で、血液線維素溶解系 (線溶系)の主要な因子であるプラスミン(plasmin)および各種マトリックスメタロプテイナーゼ(MMP)の活性化を認めることを確認した。そこで、急性肝炎におけるこれらのプロテアーゼの活性化の意義およびその機能解析を進めるため、plasminogen遺伝子欠損マウスとその野生型、またMMP-9遺伝子欠損マウスとその野生型を使用し、この急性肝炎モデルを作製したところ、これらの遺伝子欠損マウスでは生存率および病態の有意な改善を認めた。これらの結果をもとに、plasminの活性中心を阻害する新規薬剤YO-2をこの急性肝炎モデルに投与することによって、急性肝炎の病態の制御を試みた。YO-2の投与により、血中でのTNFα・CCL2などの各種炎症性サイトカイン/ケモカインの濃度上昇は溶媒投与群と比較して有意に抑制され、その生存率も有意に改善した。その機序として、TNFαをはじめとする炎症性サイトカインの多くが、各種MMPの活性化に伴い、細胞外ドメイン分泌され、末梢血中へ産出されていること、そしてYO-2がplasminの活性中心を阻害することで各種MMPの活性化を阻害し、これらの炎症性サイトカインの血中濃度上昇を抑制し、この致死的な病態の改善に寄与していることが示唆された。また、plasminが各種MMPの活性化だけでなく、CCL2などの各種ケモカインの産生/活性化を促進し、その結果単球・マクロファージなどの炎症性細胞の浸潤が促進されることが明らかになった。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件)
Leukemia
巻: 20 ページ: 145-156
10.1038/leu.2014.151
Gastroenterology
巻: 148 ページ: 565-578
http://dx.doi.org/10.1053/j.gastro.2014.12.001