研究課題/領域番号 |
25861218
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
北原 秀治 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (40510235)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 腫瘍血管 / 大腸がん / VASH2 / 血管新生 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
腫瘍は、増殖のために酸素や栄養分の供給が不可欠であり、その現場では血管の新生や退縮が盛んに行われている。そして、その腫瘍内に作られる腫瘍血管自体も、病理学的に正常血管とは異なる事も多数報告されている。さらに最近では腫瘍血管を含む腫瘍内微小環境自体が正常組織とは異なる組織であることがわかっている。従って、異常な腫瘍微小環境内に存在する血管の形態や新生パターンを把握することは、腫瘍増殖を制御するために必須となる。 今年度申請者は、昨年度から前段階の研究として、ApcMin/+マウスに自然発症する腫瘍がVASH2とどのように関わるのか?また、VASH2の発現を抑制することにより、腫瘍内の血管の新生パターンがどのように変化するのかを検索している。生後12週より消化管に腫瘍を多発するApcMin/+マウスでは、消化管上皮が腫瘍化していく段階で、異型を示す腫瘍細胞にVASH2の発現が見られた。また、Vash2-/-マウスに腫瘍を移植したモデルにおいて、有意に腫瘍増殖の抑制と腫瘍血管新生の抑制が見られた。そこで、通常のApcMin/+マウスにVash2-/-マウスを掛け合わせ、ApcMin/+/Vash2-/-マウスを作製した。その腫瘍血管の微細構造をみると、ApcMin/+マウスの腫瘍血管は周皮細胞の被覆が不十分な未熟な形態であるのに比して、ApcMin/+/Vash2-/-マウスの腫瘍血管は周皮細胞で被覆された成熟化した血管の形態であった。さらに、ApcMin/+/Vash2-/-マウスに発症する腫瘍を観察してみると、消化管における腫瘍の発症率に有意な低下がみられた。また、マイクロアレイにて発現遺伝子を解析してみると、炎症や腫瘍発症に関係のあるIL-6ファミリーやエピレグリンなどの発現が優位に下がっていた。詳細につては来年度以降に遂行予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費の現在までの研究を国際紙に投稿できたため、おおむね順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は引き続き申請書にある下記を継続する。 ②微小環境変化による腫瘍血管の形態的、機能的変化の解析;<H26年度から継続> ②-D電子顕微鏡による微細構造の比較;薄切、隣接標本を用いて、透過型電子顕微鏡による超微形態観察を、内皮細胞、基底膜、周皮細胞の変化などに注目しながら解析する。また、連続切片を使用して超微形態の3次元構築を行い、内皮細胞の有窓性などを解析する。 ③血管新生因子を抑制する事で起こる腫瘍リンパ管の変化の解析; まずは、比較用のAPCMin/+マウスにおける腫瘍リンパ管の正常から良性、悪性転化におけるリンパ管の変化を追跡し、リンパ管が豊富な消化管において、どのような形態、機能変化があるのかを解析する。その上で、血管新生因子であるVasohibin-2を抑制したAPCMin/+;Vash-2-/-マウスでは代償性にどのような変化があるのか?血管の変化とリンパ管の変化は連動しているのかなどを以下の検証方法を用いて解析する。③-A 共焦点レーザー顕微鏡による多重蛍光免疫染色標本の三次元イメージング解析:リンパ管を認識する抗体を用いて、②-Aと同様の手法を用いる。さらに、申請書に記載した以外に、今年度の研究において浮かび上がった疑問、慢性炎症とVASH2の関係について追跡し、マクロファージのフェノタイプの変化や、免疫細胞の動向などを追加して研究を遂行する予定である。これらを遂行することにより、本課題の当初の目的である「微小循環系の制御による消化管腫瘍の悪性化阻止への試み」がおおむね達成され、さらなる追求にむけて次年度以降、基盤Cへと以降していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、教室内にある物品が使用可能であったため、新規物品購入費が予定よりも減少した。しかし、次年度は共同研究のためのアメリカ渡米や、論文の構成比で金額が今年度よりも増すため、繰り越しが必要となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、アメリカへの共同研究のための渡航費、論文の英文校正費の支出が予定よりおおく予想される。また、その他物品等の使用予定は当初の予定のままである。
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