研究実績の概要 |
本研究では clinical Stage II/III進行下部直腸癌を対象とし、test setとして62症例、validation setとして44症例において、術前に内視鏡で採取した癌部の新鮮凍結切片より、laser capture micro-dissectionにより癌細胞のみを抽出した。当初は候補遺伝子を絞ったカスタムPCRアレイを作成する予定であったが、より網羅的にmRNAの発現を測定するため、GeneChip PrimeView™ Human Gene Expression Arrayを用いて網羅的解析を行った。十分な予後観察期間(中央値5年3か月)のあるtest setのサンプルを用いて、Wntシグナル特異的遺伝子セット(Cell 111,241-250,2002)および腸幹細胞(intestinal stem cell:ISC)特異的遺伝子セット(Cell Stem Cell 8,511-524,2011)のsingle sample GSEAスコアを計算し、Wntシグナル活性の高い群(Wnt-high group: n=31)とWntシグナル活性の低い群(Wnt-low group: n=31)、およびstem cell活性の高い群(ISC-high group: n=31)と低い群(ISC-low group: n=31)に分類して予後を解析した。結果、無再発生存期間(relapse-free survival)はWnt-low group及びISC-high groupで不良な傾向があったが、統計学的な有意差はなかった(各p=0.0674、p=0.1013)。validation setについては現時点では観察期間が短く、今後予後解析を行う予定である。
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