研究実績の概要 |
本年度、245症例の全ゲノムシークエンスの解析結果から、24症例について機能欠失型点突然変異を認め、さらに9症例についてARID2遺伝子内ゲノム構造異常が検出され、これらを統合するとARID2は約13% (33/245)の肝がん検体において変異を有することが明らかとなり、肝がんにおけるARID2変異の重要性を示唆している。本年度は、肝がんで検出された点突然変異の影響を検証するための各変異を模倣したARID2発現コンストラクト作成を作製した。細胞株を用いた一過性の過剰発現ではナンセンス変異については過剰発現させたタンパクは予想された通りの構造の異常を示した。ARID2欠損した肝癌細胞株へ一過性の過剰発現による細胞増殖への影響は、多くの変異体で共通の変化が観察されなかった。 本解析で用いた245症例に加えて合計300症例について全ゲノムシークエンスを完了し、報告した (Fujimoto, Furuta et al, Nature Genetics, 2016)。その結果、8.6%(26/300)の症例においてARID2変異が検出され、最も有意な変異遺伝子群の一つであることが示唆された。さらに予後との相関解析においては、ARID2とPBRM1に変異を持つクラスターが最も予後不良であることが示唆された。以上の結果からARIDファミリー遺伝子群の変異により塩基置換パターンに特徴的な変化を起こすことが明らかとなり、これらはクロマチン構造異常によってひきおこされると考えられた。今後、ARID2変異による影響を詳細に明らかにする為にはゲノム編集や長期的な安定発現、クロマチン構造の変化を追尾可能な解析系を用いて実証する必要がある。
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