当教室で手術を受けたASO患者の狭窄静脈グラフトを解析し、回収した狭窄血管,正常血管,移植前血管をマイクロアレイで網羅的に解析した結果より、病的状況で特異的に発現する遺伝子を20分子抽出し,さらに増殖能,遊走能で機能的スクリーニングを行った結果、Mitogen-activated protein kinase-activated protein kinase 3 (MAPKAPK3)とFour and a half LIM domains 5 (FHL5)という2つの内膜肥厚関連遺伝子を同定した。我々はこれらの共通転写因子であるcAMP response elements-binding protein (CREB)のDominant negativeを用いて、cAMP response elements (CRE)活性を制御することで内膜肥厚を抑制することを発見した。当教室では臨床応用をめざし、CRE活性抑制の方法として核酸医薬の一つであるDecoyを使った新しい分子治療法に注目した。CRE-decoy oligonucleotide (ODN)を設計・合成し、CRE配列へのODN結合能を評価した(Transcription factor assay)。最も結合能の高いCRE-decoy ODNを血管平滑筋細胞に遺伝子導入すると、CRE活性(Luciferase reporter gene assay)を抑制することで、増殖能(MTS assay)および遊走能(Boyden chamber method)を有意に抑制した。またCRE活性により誘導される遺伝子群の発現も有意に抑制した。現在マウス血管障害モデルにおいて内膜肥厚抑制効果につき検討中ある。
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