研究課題/領域番号 |
25861224
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
河津 聡 東北大学, 大学病院, 助教 (80633685)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 冠動脈外科学 |
研究概要 |
国民の生活習慣の変化から、虚血性心疾患などの血管性病変は増加しておりその治療成績向上は国民の健康管理の観点からも重要である。本研究は、虚血性心疾患の治療法の一つである冠動脈バイパス術の静脈グラフト劣化、狭窄を予防するために、薬物徐放が可能である生体吸収性血管外ステントを開発することを目的としている。徐放される薬物については新生内膜抑制作用があるとされるラパマイシンとシロスタゾールを予定している。薬物による新生内膜抑制作用と血管外ステントによる動脈、静脈グラフトとのコンプライアンスミスマッチ軽減により血管開存性の改善を目的としている。 現在、生体吸収性血管外ステントを作成することに成功している。生体吸収性素材としてポリL乳酸カプロラクトン共重合体(PLA/CL)を使用した。生体吸収期間が約12か月のPLA/CLモノフィラメント糸を網目状に編み込み生体吸収性血管外ステントを作成した。ステントの大きさは実験動物であるビーグル犬の大腿静脈径を想定し、直径は6mmのステントを作成している。さらにラパマイシン徐放生体吸収性血管外ステントは以下の通りに作成した。PLA/CL50mgにラパマイシン80μg、800μgを加えジオキサンを溶媒とし完全に溶解させラパマイシンゲルを作成した。先に作成していた血管外ステントにラパマイシンゲルを均一コーティングし、ジオキサンを乾燥させラパマイシン徐放性生体吸収性血管外ステントを作成した。ビーグル犬を用いた大腿動脈バイパスモデルを作成し、生体吸収性血管外ステントを移植し実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.薬物徐放性生体吸収性血管外ステントの作成 生体吸収性血管外ステントをPLA/CLモノフィラメント糸を用いて作成に成功している。網目状に編み込むことにより柔軟性があり、血管に対するフィッティングが良いステントが作成できている。またジオキサンを溶媒に用い、PLA/CLとラパマイシンを溶解しゲル状にし、ステントにコーティングする方法で薬物徐放ステントの開発も成功している。懸念された薬物徐放の追加によりステント剛性が高くなり、血管への追従性が損なわれるのではないかという点については、作成された血管外ステントは柔軟性に富み問題がないと考えられた。 2.動物実験モデルの作成 ビーグル犬を用いた大腿動脈バイパスモデルは本教室で既に確立された方法であり、本研究において問題なく作成することが可能であった。現在、非薬物徐放ステント群6例、ラパマイシン徐放吸収性ステント群(80μg)4例、ラパマイシン徐放吸収性ステント群(800μg)4例の作成を終了している。
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今後の研究の推進方策 |
1.実験モデルの作成、シロスタゾール薬物徐放性血管外ステントの作成 現在、非薬物徐放ステント群7例、ラパマイシン徐放吸収性ステント群(80μg)6例、ラパマイシン徐放吸収性ステント群(800μg)4例の作成を終了しているが、目標数は各群10例であり実験を継続する必要がある。さらにシロスタゾール薬物徐放性血管外ステントを開発し、40mg,80mgの用量で実験群をそれぞれ作成する予定である。 2.形態学的検討、生体工学的グラフト特性の評価 体表血管エコーによる吻合部血流評価、また血管弾性、血管粘弾性の評価を行う。さらに標本を摘出し病理学的検討を行う。H-E染色、E-M染色により新生内膜厚、中膜厚、血管内腔面積を測定し比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は生体吸収性血管外ステントの作成、薬物徐放法の確立などに時間を要した。有機溶媒であるジオキサンを用い、ラパマイシンゲルを作成しステントにコーティングすることで徐放が可能となった。ステント作成、薬物徐放システムの開発に時間を要したため、予想よりも実験動物モデルを作成できず次年度使用額が生じた。を使用した実験までに時間を要した。また平成26年度も引き続き、動物実験を行う必要があり、費用を要する。また病理学的検討を行うためモノクローナル抗体の購入が必要である。 実験動物であるビーグル犬を購入し、予定していた群のモデル作成を行う。また、吻合に使用するモノフィラメント糸の購入、さらにラパマイシン、シロスタゾールなどの薬品購入などに使用する予定である。また、組織学的検討、病理学的検討を行うため免疫染色を行い予定である。免疫染色に使用するモノクローナル抗体は高価であり、その購入費用に使用する予定である。
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