本研究は、冠動脈バイパス術静脈グラフト劣化予防のため、薬物徐放が可能な生体吸収性血管外ステントを開発することを目的としている。 ビーグル犬の大腿動静脈血管吻合モデルを、ステント非使用(Control)群が12頭、生体吸収性ステント(PLA/CL)群9頭、ラパマイシン80μg溶出性生体吸収性ステント(RM80)群10頭、ラパマイシン800μg溶出性生体吸収性ステント(RM800)群を10頭作成し12か月後に犠牲死させ評価した。静脈グラフト開存率はRM800群でControlと比較し高い傾向であった。病理組織学検討でグラフト吻合部ではRM80群、RM800群で、グラフト体部ではPLA/CL群、RM80群、RM800群でControlと比較し内膜肥厚度が低値であった。抗Ⅰ型膠原線維抗体染色、Elastica van Gieson染色では、Control群が他群と比較し弾性繊維が少なくⅠ型膠原繊維を多数認めた。各群の弾性線維密度を計測したが有意差は認めず、Ⅰ型膠原繊維密度はPLA/CL群、RM80μg群、RM800μg群でControlより有意に低値であった。α-SMA陽性細胞密度は、Controlと比較し他群では有意に低値であった。生理学的測定ではControl群では吻合部での血流の加速、グラフトの拡張を認めたが、他群では吻合部からグラフトにかけて血管径で血流速度も一定であった。 生体吸収性ステントによりコンプライアンスミスマッチを改善し血行力学的ストレスの影響を軽減し、グラフト部のⅠ型膠原線維、α-SMAの増殖を有意に抑制した。さらにラパマイシンによりα-SMA増殖を有意に抑制し、新生内膜増殖抑制効果が示唆された。ラパマイシン溶出性血管外ステントの使用は、静脈グラフトの遠隔期狭窄予防効果に有用であると考えられた。本研究で得た結果について、現在海外雑誌に投稿準備中である。
|