研究課題
若手研究(B)
血流可視化に関し,基礎的な技術の進歩を認めた.超音波VFMでは流線の可視化方法を改良し,渦流を明確に見えるように改良した他に可視化ベクトルの誤差評価に関し,実験データとの照合を行い誤差の要因を明確にし,より精度の高い可視化を行うことに成功した.これらの血流計測と可視化方法をもとに心負荷を予測する指標であるエネルギー損失を計測し,超音波VFM, 心臓MRI, CFDとの相互の比較を行い,その特性に関して検証を行った.臨床応用に関しても少数例を元にデータを蓄積し,臨床的な知見を構築し始めた.「大動脈弁逆流がもたらす心負荷の定量評価」に関しては自施設での大動脈弁逆流患者での超音波データ,MRIデータを蓄積し,拡張期の逆流ジェットが僧帽弁流入血流との衝突によって損失値を変化させうることを解明したのみならず,これらの結果が患者の心不全症状と明確に関連していることを解明した.また共同研究施設の動物実験を通じ,逆流ジェットがもたらす拡張期の負荷と容量負荷がもたらす収縮期の負荷に関して明確にした.「冠動脈たし病変における至適バイパスグラフトデザインの決定」に関しては当初目的としていたグラフトデザインと競合血流の問題を解明し,英文誌への投稿を終えた.さらにこの研究を追求し,術前冠動脈CTから仮想手術シミュレーションを行うシステムを現在構築している.「Norwood手術における至適術式の決定」に関しては数例の再手術を必要とした症例データを元に再手術の適応基準を明確にするべく血行力学的なパラメータを検証し,wall shear stress 60 Pa未満にする術式を目指すべきだということを解明したのみならず,このような負荷が術後の単心室の拡張能悪化につながることを明快にした.さらに仮想手術シミュレーションをCFD上で行い,本当に必要な手術術式に関して必要かつ十分な検証を行うことを可能にした.
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画に加えて多くの共同研究者が参加したことが大きい.研究は板谷個人で始めたものであったが,現在共同研究者は企業,大学工学部,大学病院,市中病院を含め約30施設が共同研究を行っている.血流可視化方法の改良,精度評価を企業の研究所,大学工学部が行い,臨床病院が多施設で臨床データを採取している.このため多くの研究ミーティングに時間を費やす結果となったが,当初の予定よりもデータ採取が早く進み,予定以上に進行している.
今後の研究の推進方法としては多くの共同研究施設が同時に参加してくれているため,より組織たった研究体制の構築を目指すことを第一に考えている.企業との共同研究による技術の評価法,精度向上を目指すとともに,必要な臨床データを具体化して複数の施設で同時採取し,より多くの臨床エビデンスを構築すべく努力する予定である.
当初の予定金額よりも若干あまり気味であった.理由としては研究開始年度であり多くの出費が予測されたため控えめに使用したことがあげられる.今後の予定としては結果の学会報告,共同研究者とのミーティング,学会参加が増加することが予測され,出張費を多めに割り当てる予定である.また論文校正費も多めに見積もる予定である.
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