研究課題/領域番号 |
25861232
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
板谷 慶一 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (70458777)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血流解析 |
研究実績の概要 |
昨年度施設移動があり、新たな施設と新たな環境での研究体制を整えることに終始していた。 研究成果を施設移動の際に教科書としてまとめ、Nova Science Publisherから"Advances in Hemodynamics Research"という教科書で発表した。 ①超音波VFMは前施設でも臨床研究結果を多く発表してきた。新施設では術中経食道超音波をもとにデータを解析できるように麻酔科と協力し、手術室に解析用PCとケーブルを持ち込み、超音波装置と解析PCを連動させることによりほぼreal time VFMを実現した。その結果、僧帽弁のSAM (systolic anterior motion)の際に発生する僧帽弁周囲の渦流が逆転する現象を捉え論文投稿を行った。また僧帽弁形成術を僧帽弁置換術とで渦流の向きが逆転し、術前後で比較すると明らかに僧帽弁形成術が渦流のエネルギー損失上有利になっていることを示し、国際学会ACC2016で発表した。②Phase Contrast MRIによる血流可視化:非造影拍動解析で3次元の血流解析ができるようにシステムを組んだ。新施設でも同手法が有用であるかどうかを検討するため、先天性心疾患手術後数例と大動脈弁置換手術後症例で検討し、3次元的にエネルギー損失、運動エネルギーが再現性を持って解析できることが示された。③CFD血流解析は新任施設での大動脈瘤症例で血流がもたらす内皮への影響を検討し、大動脈解離の予測をおこない、ヨーロッパ胸部外科学会で発表し、会長賞を受賞し、論文化された。④圧流速同時計測カテーテルは小児先天性心疾患単心室症例で多くのデータを解析した。呼吸と心拍による血流のflow driveを抽出し、Fontan循環の駆動力に関して基礎的な考察を行い、Annals of Thoracic Surgeryに論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定していた研究は前任施設での寄附講座での技術開発及び臨床研究であったが、国内海外の多くの施設の協力により、一大学の一研究室で行うには研究の規模が大きくなりすぎたと思われる。想定していた研究内容はほとんど全て論文発表に到達しているが、その後多くの施設の先生方から研究に関する助言をいただき、臨床研究ツールとして普及されるべく産業化することに力を注いだ。 まずMRI血流解析方法をソフトウェア化することに成功し、ベンチャー企業Cardio Flow Design社を設立。SIEMENS healthcareやPhilips healthcare社と共同でシーケンスを最適化した。 CFD血流解析は計算不可が大きいため、膨大な症例でデータを解析するためには強固なシステムが必要と思われた。国内最大規模のIT企業であるNECソリューションイノベータ社と上述のベンチャー企業Cardio Flow Design社が共同でクラウド事業を起こし、産業利用を認められた公的スパコンFOCUSの利用申請を行った。解析は流体構造解析のソフトウェアの製造販売メーカーとしては世界最大規模のANSYS Japan社が協力体制に入り、自社製品をこれまで我々が行ってきた血流解析手法にもとづいて組み換え、自動演算処理ができるように開発した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は臨床研究の枠を超えて血流診断ツールとしての意義を明確にするべくエビデンスを構築すると同時に、血流診断を一般診療に組み込むためのプロセスに関して考慮する必要があると考えている。 ①今後は超音波VFMを3次元化すべく流体の方程式であるNavier-Stokes方程式から1解が明示的に与えられた場合にいかに計算負荷を少なく解くかを考え、その発案を研究会・血流会で発表し、開発を進めている。②MRIでの3次元血流解析は今後人工弁周囲血流の評価のために新たに寄附講座が立ち上がり、検証作業を行うこととする。③また冠動脈の血流解析を北海道循環器病院と共同で行い、基準値づくりを行った。今後多症例で解析を行い、エビデンスを構築するよていである。
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次年度使用額が生じた理由 |
施設移動に伴い、研究の状況が変わり、必要なものが一時的に昨年度減少したことと、その後必要な研究費が発生したことがある。
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次年度使用額の使用計画 |
残金は十分な金額ではないため、現在のところ論文印刷費、英文校正費、学会出張費を予定している。
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