研究概要 |
当研究の本実験を行うにあたり、まず、①胸骨正中切開後の胸骨虚血モデルの作成とその確立、②Platelet Rich Plasma(PRP)の作成とその確立について研究を進めることにした。 ①モデルの確立:日本医科大学の動物実験倫理委員会の指導要領に則り、麻酔はケタミン、キシラジンにより行い、酸素マスクによる呼吸管理を行った。胸骨正中に皮膚切開を置き、皮下の筋層をメスで切開した後に胸骨を露出した。メイヨーで胸骨正中切開を行い、出血に対しては電気メスを使用した。胸骨胸壁側から両側の内胸動脈を剥離し側枝をすべて結紮し、サージカルクリップで内胸動脈中枢・抹消の両側を遮断し、胸骨の虚血モデルを作成した。2-0非吸収性縫合糸で胸骨を数針縫合固定し、止血を確認後3-0吸収性縫合糸で筋膜、表皮を縫合し手術終了とした。モデル作成後にランダムに群分けされ、投与内容を決定する方針とした。モデル作成に4週間の観察期間を設け、その後、屠殺後に評価していく予定である。初期には胸骨切開部の接合部ずれによる創部離開、感染による創傷治癒不全などを併発し、ラット胸骨正中切開モデルにばらつきが見られたが、ラーニングカーブとともにモデル作成が安定してきた。 ②PRPの作成:ラット股動脈を露出し、20Gのインサイトを挿入して動脈血を採取した。ACD-A入り真空管に血液を注入後、遠心分離を施行した(①4℃, 1000G, 10分)。さらに上層の血漿成分とbuffy coatを吸引し、2回目の遠心機にかけた(4℃, 2100G, 10分) 。最後に残存したbuffy coatを吸引しPRPとした。諸文献の遠心分離条件を検討した上で、上記条件でPRP作成した結果、全血血小板が17.0±2.9万/μlに対して、PRP血小板174.3±33.3万/μlであり、約10倍のPRPが得られた為、十分使用できるPRPと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで胸骨癒合不全モデルの作成方法とPRP作成方法を確立しえた。今後、本実験に向けて実験タイムスケジュールの計画および、評価法の確立を目指している。具体的には、血管新生と骨新生の観点から評価判定を行う予定である。まず、病理学的評価として、HE染色あるいはMMP染色にて骨化の評価を行い、免疫染色にて新生血管の評価(Anti Rabbit CD31抗体 (ORB10315, BRT社製)、Anti Rabbit CD34抗体 (ORB10318, BRT社製)やαSMP染色による血管内皮細胞、capilary density)を行う予定である。また、動物用CT(LCT200, aloka社製)にて胸骨CTを撮影し、胸骨全体のBMC(bone mineral content), BMD(bone mineral density)を測定し、骨強度の評価も検討している。さらに、血管新生の新たな評価法として注目しているTcシンチグラフィーを施行した新生効果の評価や、骨の張力テストとして、胸骨を切開線に対して垂直に引っ張りその強度を測定する小型卓上試験機(EZ Test, Table-Top Universal Testing Instruments, 島津製作所社製)の使用も検討中である。
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