研究課題
若手研究(B)
大動脈解離は大動脈中膜が突然断裂する致死的疾患であるが、その病態は殆ど解明されておらず、発症や進展に関わる因子も不明である。申請者独自の大動脈解離マウスモデル及び人解離組織を用いてチアゾリジン系薬物の効果と分子機序を明らかにすることを目的として研究を進めた。まず、大動脈解離マウスモデルの組織学的検討を行った。野生型マウスを用いて塩化カルシウム処置、アンギオテンシン負荷を行うことで、腹腔動脈、上腸間膜動脈分枝部にエラスチン破壊、炎症反応浸潤が起こり、それが経過とともに治癒機転が働くことが明らかになった。このモデルを使用し、ピオグリタゾン投与を行ったところ、大動脈解離病変の増悪を認めた。仮説とは逆の所見であり、今後組織学的検討(HE、EVG、ピクロシリウスレッド染色、アデリポネクチン免疫染色等)やアディポネクチン関連分子の動態についてウエスタンブロットによる評価を行っていく。
2: おおむね順調に進展している
申請者が独自に開発した大動脈解離モデルマウスにおける組織学検討行い、マウスにおいて解離発症後に治癒過程が働くことが確認できた。またこの大動脈解離マウスモデルを用いてピオグリタゾン投与することで、増悪することが判明した。今後そのメカニズム解明にむけて研究を進める。
ピオグリタゾン投与で大動脈解離が増悪するメカニズム解明のため、アディポネクチンに関するシグナルを中心に免疫染色、ウエスタンブロットによる解析を、またバイオマーカー探索のための遺伝子学的解析を行う。次に解離増悪のメカニズムとしてピオグリタゾンの副作用でもある体液貯留が悪影響を及ぼしている可能性も疑われたため、塩分負荷により体液貯留を図り、大動脈解離への影響を検討する。さらにヒト解離組織における病理学的解析、組織培養によるピオグリタゾンの影響を確認し、大動脈解離症例へのピオグリタゾン投与の危険性の有無を検討する。
ピオグリタゾン投与による大動脈解離への影響が予想より少ない実験数で確認することができ、マウス購入費、実験試薬、消耗品が予定より節約することができた。前述の今後の研究推進方策を進めるにあたり、マウスの購入やマウス実験試薬、消耗品、組織関連試薬や生化学実験消耗品の費用及び成果発表における費用として使用する。また遺伝子学的解析も行う。これにより、当初の計画以上の成果を上げることを目指す。
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Scientific Reports
巻: 4 ページ: 4051
10.1038/srep04051