腹部大動脈瘤(AAA)には現在有効な薬物療法がなく、慢性炎症による動脈壁の破壊が本態と言われている。我々は予備実験でヒトAAAにおけるIL-6の分泌とJAK/STAT経路に関わる遺伝子発現の亢進を認め、CaCl2を大動脈に塗布するAAAモデルマウスを作製し、IL-6受容体阻害抗体(MR16-1)の投与によるAAA形成と分子病態の解析を行った。MR16-1の全身投与群ではAAA形成が抑制され、炎症や組織破壊に関わる分子の発現が軽度抑制され、また組織修復に関わる分子の発現が亢進した。以上からIL-6の阻害は主に修復を亢進する事でAAA形成を抑制しており、有望な治療標的となる可能性を示した。
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