本研究の主目的は、肺移植後の最大の長期予後規定因子である慢性拒絶反応(慢性閉塞性肺疾患:OB)に関する病態解明と治療方法の開発である。実際OBの研究は長年行われてきているもののその発生機序に関しては依然不明のままであり、マウスを使った基礎実験に期待が寄せられている。まず、免疫反応の主役の一つである樹状細胞に注目し、肺移植における早期のドナー抗原認識のための樹状細胞の役割についての検討を取り上げて実験を施行した。まず樹状細胞には骨髄系(mDC)と形質細胞様(cDC)の2種類の亜系がありそれぞれを抗体注入法にて欠失させ、それぞれの亜系を欠損するマウスを作成し、そのマウスをドナーとして用いてMHCミスマッチのマウスと肺移植を行い、リンパ球及び病理組織解析を行うことによりそれぞの樹状細胞の役割を解析した。その結果より肺移植後の免疫反応に関して、樹状細胞は重要な役割を果たしており、それぞれの亜系が個々の作用を有している可能性が示唆され、第9回肺移植カンファレンスプログラムにて発表を行った。またこれまでの研究から軽度のマイナー組織適合抗原のミスマッチによるOBモデルでは、移植後28日目に約50%のOB所見が得られることが分かっており、主にこれまでT細胞を中心とした細胞性免疫が主体であったが、液性免疫の関与についてはまだ明らかとされておらず、我々はC3aに注目して、慢性拒絶反応に関与していることを確認し、治療法の開発について可能性を示した。また臨床及びこれまでの基礎実験における慢性拒絶反応のレビューを2015年11月の医学のあゆみで肺移植の現状と課題という特集にまとめた。
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