触知する事が困難であろう肺結節や触知を使用できない胸腔鏡下手術において肺の局所切除を施行するためには病変を視覚化する必要であり、本研究の目的は、理想的(既存の方法より有用かつ安全)な方法、すなわち新しい肺マーキング法の確立であった。平成25年度研究では実験計画通りPDD内視鏡システムとビタミンB2を利用した蛍光による経気道マーキング法を実験動物(ブタ)を使用して、優れた描出力、十分な描出時間、安全性(手技に伴う危険性のある従来のマーキングと異なり本法では複数のマーキングが可能となる)を兼ね備えた理想的なマーキング法を確立した。平成26年度研究では、より臨床での状況を想定し、計12頭の実験動物(同じくブタ)を使用し、臨床を想定した手技の改良および有用性・安全性の評価を行なった。方法としては前年度とは異なり手術前状態を想定し、すなわち麻酔導入後、閉胸下にX線透視装置をガイドに硫酸バリウムで仮想対象病変を作成、更に同X線透視装置を使用し、対象病変を3点で取り囲む様にマーキングを施行した。施行後、胸腔内に内視鏡手術用ポートを挿入し①マーキングの可否を確認、②マーキングの蛍光強度・持続時間の評価を行い、③更に開胸後にマーキングをガイドに肺部分切除を施行し、切除断端距離・確保の可否を評価した。④さらに実験を通して本マーキング手技に伴う合併症を評価し、安全性の評価とした。結果として、①施行した蛍光マーキングはすべて観察可能であり、②十分な蛍光強度・持続時間を有していた。さらに③複数マーキングをガイドにした肺切除では適切な切除断端距離が確保出来ることを確認し、④手技に関した合併症のない事も確認できた。以上、これまで本結果を国内外で学会発表し、現在、論文報告の準備中である。また、平成26年度後半にはこの結果を持って実臨床への導入を予定していたが、現在、院内臨床試験委員会に申請準備中である。
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