喫煙が発症要因になっている可能性のある肺腺癌(喫煙関連肺腺癌)のエピゲノム異常を探索するために、臨床検体を用いた網羅的なCpGサイトのDNAメチル化及び発現解析により探索した。Infinium methylation assayにてDNAメチル化を網羅的に検索したところTRIM58は癌部正常部比較のメチル化はtotal群でtumor:37.9±12.9%、normal:15.4±3.7%(t-test p<0.0001)、smoker群で、tumor:45.1±9.7%、normal:14.5±3.6%(t-test p<0.0001)、non-smoker群で、tumor:30.7±14.8%、normal:11.3±2.0%(t-test p<0.0001)であり、癌部で有意にメチル化が高く、よりsmoker群でメチル化が高い傾向にあった。Pyrosequencingにても同様に癌部で有意にメチル化が高かった。Real time RT-PCRでは癌部正常部比較で(/normal tissue)ではsmoker群で0.12±0.08、non-smoker群では0.12±0.05と喫煙に有無に関係なく、癌部で有意にmRNAの発現が低下していた。免疫染色でも癌部には発現が低下しており、蛋白レベルでも発現抑制が認められた。TRIM58の発現のない肺癌培養細胞株であるA549にmutant-TRIM58とwildtype-TRIM58をtransfectionした。MTTassayではwild-TRIM58-A549で増殖抑制が認められた。また、これらのA549をSCIDマウスに皮下移植を行い、CT volumemetryした。28日後の大きさはcontrol群825±237mm3、mutant群470±88mm3、wildttype群230±56mm3と有意に腫瘍増殖を抑制した。これらにより肺癌においてTRIM58はDNAメチル化により不活性化する癌抑制遺伝子であると考えられた。
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