研究課題
若手研究(B)
循環血液中腫瘍細胞(CTC) のスタンダードな検出方法である“CellSearch”を用いて、肺癌の予後の検討を行ったが、検出感度については十分とは言えなかった(Tanaka F他、Clin Cancer Res 2009等)。その理由として、“上皮-間葉系転換 (EMT)”の影響が示唆されている。今回、大永らが開発した国産の マイクロ流体チップ“CTC-chip”(Ohnaga T他. Biomed Microdevices 2013等)を用いりことで、EMTの影響を克服し、より高感度かつ信頼性の高いCTC検出システムに改良することを目的に研究を行っている。“CellSearch”はCTCの発現する上皮細胞接着分子(EpCAM) に対して、抗EpCAM抗体を用いてCTCを検出するシステムであり、“CTC-chip”も抗EpCAMを用いた基礎実験には成功している。今年度は、実際の臨床検体(肺癌患者)からCTCの分離を行い、CK染色を行うことで同定に成功した。ただし、CK染色のみで同定を行っており、リンパ球などの他の細胞との分別が困難であった。そこで、CKと核染色(Hoechst)とCD45(リンパ球否定目的)の蛍光染色が必要と考え、蛍光染色の実験系を確立させた。また、抗EpCAM以外の抗体を用いた検出システムを確立させるための第一段階として、抗Mesothelin抗体、抗Podoplanin抗体を用いて腫瘍細胞の検出を行った。悪性胸膜中皮腫の細胞株を用いた基礎実験において、PBSをバッファーとした実験においては、ほぼ100%の細胞を回収できた。また、健常人の血液をバッファーとした実験では回収率は10%程度であった。 “CellSearch”で行った実験より5倍程度回収率が高く、抗EpCAM抗体以外の抗体を用いることで有意に検出率が改善されるものと思われた。
2: おおむね順調に進展している
“CTC-chip”上で捉えた細胞の検出法(CK、hoechst、CD45の免疫蛍光染色)が確立できたので、臨床検体を用いてCTCの検出の再現性を行っていく。また、抗EpCAM抗体以外の抗体を使用した実験の問題点としては、健常人の血液を用いると捕捉率が低下することが判明しており、血液を用いた場合の捕捉率の改善を模索していく(具体的には、流速の調整、血漿交換などの前処理を加える、抗体反応のタイミングの調整、など)。
まずは、健常人の血液を用いて、腫瘍細胞の捕捉の基礎実験を行い、その方法を確立させる(血液での実験での捕捉率が低いので改善策を模索し、その方法を確立)。その後に、再度、臨床検体での循環腫瘍細胞の検出を行っていく。さらに、EMT関連の表面マーカーでの捕捉の是非を検証し、EMTを起こした腫瘍細胞の捕捉にとりかかる。
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