研究課題/領域番号 |
25861251
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
近石 泰弘 産業医科大学, 医学部, 非常勤医師 (70609221)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 循環腫瘍細胞(CTC) / 肺癌 / 上皮間葉転換(EMT) / 上皮接着分子(EpCAM) / CTC-chip |
研究実績の概要 |
循環血液中腫瘍細胞(CTC) の新しい検出方法の確立として、今回、大永らが開発した国産の マイクロ流体チップ“CTC-chip”(Ohnaga T他. Biomed Microdevices 2013等)を用いて、より高感度かつ信頼性の高いCTC検出システムに改良することを目的に研究を行っている。 平成25年度の報告において、上皮細胞接着分子(EpCAM) の発現がない細胞株を用いた“CTC-chip”の基礎実験で、抗Podoplanin抗体を用いることにより、“CellSearch”で行った実験より5倍程度高い回収率が得られたことを報告した。今年度は“CTC-chip”の基礎実験の再現性を中心に行った。細胞株を5% BSA in PBSに懸濁した場合と、健常人の血液に細胞株を懸濁した場合で“CTC-chip”での捕捉実験を行い、細胞の捕捉率の再現性を確認した。昨年度に報告した場合と同様、再現性のあるdataを得ることが出来た。ただし、健常人の血液に細胞株を懸濁した場合は捕捉率がACC-MESO1(EpCAM発現(-))の場合は12.7%、ACC-MESO4の場合は38.4%(EpCAM発現(-))と十分な捕捉率が得られなかった。 “CTC-chip”は基礎抗体として抗マウスIgG、捕捉抗体としてマウス抗ヒト抗体を使用し、2段階で抗体のcoatingを行う。今回、十分な捕捉率を得るために、抗体濃度の調製を行った。具体的には、捕捉抗体である抗podoplaninの濃度をそのまま(20μg/ml)にして、基礎抗体である抗マウス抗体の濃度を10倍にした(20μg/ml→200μg/ml)。その条件で再度捕捉実験を行うと、健常人の血液に細胞株を懸濁した場合は捕捉率がACC-MESO1の場合は37.9%、ACC-MESO4の場合は83.1%と十分な捕捉率を得ることが出来た。現在使用している“CTC-chip”において、抗体の濃度が、細胞の捕捉に大きく影響することが判明した。来年度は複数抗体を用いて、細胞の回収率を検討し、さらには、実際の臨床検体のdataの蓄積をすることを目標としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
“CTC-chip”の捕捉性能の再現性の実験を行うことが出来た。捕捉の性能は再現性のあるdataが得られた。また、基礎になる抗体の濃度を上げることで、捕捉率が上がることが判明し、血液を懸濁させた際に十分な捕捉率を得ることが出来た。今後は捕捉する抗体の種類を増やして、実験を行っていき、さらなる性能の向上につなげていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
EGFRやHER2などの抗体を用いてCTC-chipでの捕捉が可能かを検証し、再現実験を行い、捕捉効率を検証。十分な結果が得られれば、複数抗体のcoatingを行い、より性能の高いCTC-chipの検出法の確立を目指す。さらに、臨床検体でのdataを蓄積し、実際の臨床現場にCTCのdataを還元できるようなシステムを構築していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
循環腫瘍細胞を捕捉するためのマイクロ流体デバイスであるCTC-chipを使用した研究を行っているが、現在は様々な抗体を使用しての捕捉を試みている。 直近ではEGFRの抗体を追加で購入して、捕捉が可能なこと確認した。さらに複数の抗体を購入して捕捉実験を行う予定であったが、使用する抗体の選定に時間がかかり、次年度に持越しとなっている。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の使用計画としては、抗体の購入や、CTC-chipの購入などに費用を使う予定である。
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