研究課題/領域番号 |
25861252
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 静岡県立静岡がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
山内 良兼 静岡県立静岡がんセンター(研究所), その他部局等, その他 (30445390)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 原発性肺癌 |
研究概要 |
肺癌症例におけるS100A14蛋白の発現に対する臨床的意義を検討した。まず、当院での手術を受けた肺癌症例の腫瘍組織の病理組織標本を収集し、S100A14の発現の免疫組織化学的判定を行った。判定基準は、細胞膜が連続性に強く染色される細胞が全体の50%以上あるものをポジティブ、それ以外のものをネガティブとした。 患者の性別、年齢、組織学的分類、病理学的T分類、N分類、ステージ、腫瘍のサイズにおいて発現との相関を調べた。このうち組織型により発現と生存率との関係の間に傾向の違いを認めた。さらに、各種遺伝子変異、核異型の程度、リンパ管侵襲や血管侵襲の有無、Mitotic countとの相関関係は明らかなものは認めなかった。 Human lung cancer cell-line におけるS100A14の発現を調べ、実験に最適なcell-lineを選択した。リアルタイムPCRと免疫染色の結果から、もっとも発現の高いQG56を選択した。まずS100A14をノックダウンし、そのノックダウン効果を確かめた。免疫染色、ウエスタンブロッティングともに十分なノックダウン効果が得られた。この細胞を用いて、XTTアッセイ、invasionアッセイ、wound healing assayを行った。XTTアッセイではコントロールとノックダウン細胞で有意な差は見られず、増殖能には影響しなかった。各アッセイではS100A14の抑制により浸潤能が有意に減弱する、遊走が減弱することが示された。次にウエスタンブロッティング法により、S100A14に関連するsignal pathwayの検索を行った。S100A14の抑制によりMAPKのリン酸化が減弱した。その他の、増殖・浸潤関連シグナルであるFAK、PI3、Src、Aktなどでは有意な差がみられず、これらのsignal pathwayの変化には影響しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌の浸潤・転移におけるS100A14蛋白の臨床的意義は明らかになってきていると思われる。 S100A14の分子メカニズムの解析ではS100A14のタンパク発現の細胞内局在を認識できるような、適切な実験系の確立も出来ており、予後を予測するバイオマーカーや転移・浸潤に対する予防・治療のターゲットなど、S100A14を標的とした診断・治療への応用への検討が可能である
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今後の研究の推進方策 |
S100A14を中心とした肺癌の浸潤・転移における分子メカニズムの解析を継続的に進めていく予定である。 予後予測診断としては肺癌においては、組織型によりS100A14蛋白の臨床的意義は異なるようであり、肺癌の予後を的確に予測し得るシステムを構築していきたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験のための材料(抗体など)の購入費用に使用する予定であったが、以前に使っていた材料を使用することで実験が継続的に進行でき、代用可能であったため 本年度分の動物実験のための動物購入のために費用に使用する予定である。
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