昨年度までの研究内容として、肺癌症例におけるS100A14が予後因子として関与している可能性を示唆する臨床データが得られた。特に、組織型によりその関与パターンが異なる可能性が示唆され、そのメカニズムの解明が必要と考えられた。 まず、ヒト肺癌細胞株におけるS100A14の発現を比較し実験に最適な細胞株としてQG56細胞を選択し、S100A14をノックダウンしたQG56細胞を用いて、細胞増殖能、細胞浸潤能、細胞遊走能の評価を各アッセイ系で評価し、ノックダウンの影響が増殖能には影響しなかったものの浸潤能および遊走能は有意に減弱した。S100A14に関連するsignal pathwayの検索を行い、S100A14の抑制によりMAPKのリン酸化の減弱を認めた。 まず、症例数を増やすことによりS100A14の予後因子としての役割を明確にすることができるのではないかと考え、これまでの検討の数倍程度に症例数を増やしたが、症例数を増やしても組織型による違いは依然として有意なものであったものの、転移部位や腫瘍の病理学的な悪性度には直接的な違いを見出すことは出来なかった。 肺癌細胞株におけるS100A14の分子メカニズムの解析において、タンパク発現の細胞内局在を認識する実験系により、予後予測因子となりうるバイオマーカーや転移・浸潤に対する治療ターゲットを探索する予定であったが、2014年6月より留学に伴い研究を終了した。
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