研究課題
本年度は前年度に引き続き、悪性胸膜中皮腫の臨床検体におけるEGFRの発現について、免疫組織化学染色を用いて評価を行った。免疫組織化学染色はコンパニオン診断薬の試薬と判定基準を用いた。EGFR発現はほとんどの悪性胸膜中皮腫において陽性と判定された。EGFR発現の強弱はuPAR, uPA, PAI-1の発現と関係はなく、予後との関連も認められなかった。また、uPARを恒常的に発現する悪性胸膜中皮腫細胞株や、siRNAにてuPARを抑制する実験系とEGFRの下流シグナルについて検討を行ったが、有意な結果は認められなかった。本研究において、これまで我々は以下の知見を得た。(1) 悪性胸膜中皮腫におけるウロキナーゼレセプター(uPAR)の発現と予後解析を行い高発現群が有意に予後不良であったが、症例を増やしても同様の傾向が認められた(p<0.05)。(2) uPARのリガンドであるウロキナーゼ(uPA), その阻害因子であるプラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1)の免疫組織化学染色では、臨床病理学的因子との比較解析を行ったが、予後を含め明らかな関係が認められなかった。(3)低酸素条件下でのuPARの発現上昇を認めており、胸腔内の微小環境が悪性胸膜中皮腫の悪性化に関わっている可能性があること。(4)EGFR発現とuPAR発現については有意な関連を認めなかった。今後はこれらの分子機序を用いて、悪性胸膜中皮腫の新たな診断、治療法について開発を進めていく。
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Annals of Surgical Oncology
巻: 22 ページ: 2593-2598
10.1245/s10434-014-4218-0
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