研究課題/領域番号 |
25861256
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
菅原 健一 琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (50375573)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経膠腫 / PET検査 / L型アミノ酸トランスポーター |
研究実績の概要 |
悪性脳腫瘍、特に神経膠腫では悪性度や進展範囲を正確に把握することは適切な治療方針を決定する上で非常に重要である。その活発な細胞増殖能を反映してアミノ酸代謝が亢進していることが知られ、アミノ酸をトレーサーとしたPET検査が利用されている。一般的にメチオニンがトレーサーとして用いられているが、チロシン(18F-α-methy l tyrosine;FMT)をトレーサーとしたPET検査の悪性脳腫瘍における集積機序は解明されていない。平成25年度はFMT-PETの画像解析を行った。T/N比は全神経膠腫症例において悪性度(WHOグレード)とに有意な相関関係がみられた。病理組織型では星細胞系腫瘍において悪性度とに有意な相関関係がみられたが、乏突起膠細胞系腫瘍ではその傾向はあるものの有意な相関関係はみられなかった。SUVmax、T/N比は星細胞型系腫瘍に比べて乏突起膠細胞系腫瘍で高い傾向にあった。平成26年度は組織学的解析を行った。チロシンやメチオニンはL型中性アミノ酸輸送蛋白(LAT)による能動輸送で細胞内に取り込まれタンパク質合成に利用される。LATのアイソフォームの一つであるLAT1が神経膠腫細胞や血管内皮細胞に高発現していることが報告されており、チロシンの腫瘍細胞への取り込みに関与していることが推測される。病理組織診断用に手術摘出で得られた腫瘍組織(既存試料) からパラフィン包埋切片を作成し、抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を用いて腫瘍細胞および血管内皮細胞におけるLAT1の発現を解析した。腫瘍細胞においてはLAT1は細胞質、細胞膜に発現しており、悪性度(WHOグレード)に比例して高発現する傾向にあった。血管内皮細胞においては悪性度に関わらずLAT1の発現を認めたが、悪性度(WHOグレード)の高い症例ほどLAT1を発現する血管密度は高い傾向にあった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度はFMT-PETの解析を行い、FMTの集積の程度と病理組織型、悪性度(WHOグレード)との比較検討を行った。平成26年度は神経膠腫のパラフィン包埋切片を用い、腫瘍細胞、血管内皮細胞におけるL型アミノ酸トランスポーター1の発現と血管増生の程度について組織学的解析を行った。研究は概ね計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
神経膠腫におけるFMTの集積の解析とLAT1発現、血管増生、血液脳関門の破綻の程度、悪性度(WHOグレード)、組織型、細胞増殖能等の組織学的解析とを行い、集積機序を解明することが研究の目的である。 平成27年度は本研究の最終年度である。引き続き組織学的解析を行い、研究成果のまとめを行う。統計解析を行うに当たりデータのばらつきを最低限にするため、平成26年度よりもさらに症例数を増やして検討する予定である。病理組織診断用に手術摘出で得られた腫瘍組織(既存試料) からパラフィン包埋切片を作成し、以下の免疫染色を行う。①L-type amino acid transporter 1(LAT1); 抗ヒトLAT1モノクローナル抗体を用いて免疫染色を行い、LAT1の発現を解析する。LAT1は12回膜貫通型の膜蛋白であり、膜1回貫通型の糖蛋白である4F2heavy chain(4F2hcまたはCD98)とヘテロ2量体を形成することではじめて機能する。抗ヒト4F2heavy chainポリクローナル抗体(Trans Genic Inc.)を用いて4F2hc の発現についても解析を行う。②CD31、CD34; 血管増生の程度を解析するため血管内皮細胞のマーカーであるCD31、CD34を用いる。抗ヒトCD31モノクローナル抗体、抗ヒトCD34モノクローナル抗体を用いて免疫染色を行う。③Ki-67; 細胞増殖能の指標として抗Ki-67モノクローナル抗体(clone MIB-1、DAKO)を用いて免疫染色を行い、MIB-1LIを算出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度(平成27年度)は平成26年度に引き続き組織学的解析を行い研究成果をまとめる予定であるが、統計解析を行うに当たりデータのばらつきを最低限にするため、平成26年度よりもさらに症例数を増やして検討する必要性が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は腫瘍細胞、血管内皮細胞におけるLAT1の発現と血管増生の程度について症例を追加して引き続き解析を行うとともに細胞増殖能の解析も行い、本研究の成果のまとめを行う。病理組織診断用に手術摘出で得られた腫瘍組織 からパラフィン包埋切片を作成し、以下の免疫染色を行う。腫瘍細胞と血管内皮細胞におけるLAT1、LAT1とヘテロ2量体を形成する4F2heavy chain(4F2hc)の発現評価、血管内皮細胞のマーカーであるCD31やCD34の免疫染色による腫瘍血管密度の評価、MIB-1 Labeling index算出による増殖能の評価を行う。
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