研究課題/領域番号 |
25861257
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 將太 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80643725)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 乏突起膠腫 / 腫瘍制御因子解析 |
研究概要 |
まず、患者腫瘍検体におけるMYT1Lの発現をquantitative real-time PCRにて検証した。発現には大きなばらつきがあるものの、LOH 1p/19qを有する腫瘍における発現はLOHを有しない腫瘍に比べて有意に高かった。これは、先行する研究におけるマイクロアレイ遺伝子発現解析の結果に合致するものであった。 次に、MYT1Lを強制発現させた細胞を作成し、抗MYT1L抗体が正常に認識することを確認した。まず、Cos7および293T細胞にMTY1Lをトランスフェクションさせたvectorを作成した。タグにはGFPまたはV5を用いた。抗体には、先行する研究で作成済みの、異なる抗原部位に対する3種の抗ウサギポリクローナル抗体(A抗体・B抗体・C抗体)を用いた。V5・MYT1LをトランスフェクションしたCos7細胞に対する免疫化学染色では、抗タグタンパク抗体、抗MYT1L抗体とも核に局在するシグナルが観察された。GFP・MYT1Lをトランスフェクションした293T細胞に対するWestern blottingでは、A抗体・C抗体でMYT1Lのバンドが観察された。 MYT1L強制発現細胞をA抗体・C抗体が正常に認識しうることが確認されたため、腫瘍検体を用いて同様に免疫化学染色およびWestern blottingを行い、qRT-PCRの結果と照合した。qRT-PCR上のMYT1L発現量をもとに高発現グループ3検体と低発現グループ3検体を抽出。Western blottingに関しては、どの抗体を用いても、また高発現グループに対しても低発現グループに対しても、293T強制発現細胞と同じ部位にバンドを認めなかった。免疫化学染色に関しては、A抗体のみで染色されたものの、低発現グループでも強度の染色が見られ、MYT1L染色性は発現量に相関していなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乏突起細胞腫において高率に(70%以上)テロメア伸長酵素TERTのプロモーター領域に遺伝子変異が認められることが、昨年発表された(Killela PJ, et al. PNAS 2013; Arita H, et al. Acta Neuropathol 2013)。その遺伝子異常は、C228TあるいはC250Tというhot spotを有し、IDH1/2遺伝子変異かつLOH1p/19qを有する神経膠腫のほぼ全例で認められた。これは、TERT変異が従来のSanger sequencingにて検知しえLOH1p/19qの代替マーカーになりうる可能性を示唆し、本学の腫瘍検体アーカイブを用いたTERT変異の検証が急務と考えられ、それに6ヶ月を要した。
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今後の研究の推進方策 |
抗MTY1L抗体としてN末端抗体とC末端抗体(ab93671、ab13732;ともにAbcam)が市販されているので、それらを購入し、同様の実験にて抗体の信頼性を検証する。すなわちまず、MYT1L強制発現細胞を用いWestern blottingと免疫化学染色にて抗体がMYT1Lを認識することを確認する。その後、腫瘍検体を用いてWestern blottingと免疫化学染色を行う。さらにqRT-PCRによるMYT1L発現量との相関性を検証する。 抗MYT1L抗体の信頼性が確認できれば、腫瘍検体アーカイブのより多数の症例を用いて免疫組織染色を行い、LOH1p/19qとの相関性を検証する。また患者予後との相関を検討し、LOH1p/19qの場合との比較を行う。 TERTプロモーター遺伝子変異・CIC遺伝子変異・FUBP1遺伝子変異とMYT1L発現との相関を検討する。相関が見られれば、遺伝子導入やノックダウンの手法を用いて因果関係を検証する。また、MYT1L高発現グループと低発現グループの遺伝子発現の比較、あるいは遺伝子導入・ノックダウンに伴う遺伝子発現の変化を、マイクロアレイなどを用いて網羅的に解析し、MYT1L発現と関連して制御されている遺伝子の候補を抽出する。
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次年度の研究費の使用計画 |
乏突起細胞腫における新たな知見としてTERTプロモーター遺伝子の点突然変異が昨年報告されたため、その検証が急務と考えられ、本学の腫瘍検体アーカイブを用いた遺伝子解析を行うために6ヶ月が必要となり、MYT1L強制発現細胞の樹立や、抗MYT1L抗体を用いたWestern blottingや免疫化学染色の実験に遅延が生じた。 市販の抗MTY1L抗体(N末端抗体ab93671、C末端抗体ab13732;Abcam)を購入し、MYT1L強制発現細胞を用いWestern blottingと免疫化学染色にて抗体がMYT1Lを認識することを確認し、腫瘍検体を用いてWestern blottingと免疫化学染色を行う。さらにqRT-PCRによるMYT1L発現量との相関性を検証する。 抗体の信頼性が確認できれば、腫瘍検体アーカイブのより多数の症例で免疫組織染色を行い、LOH1p/19qとの相関性を検証する。また患者予後との相関を検討し、LOH1p/19qと比較する。 TERT変異・CIC/FUBP1遺伝子変異とMYT1L発現の相関があれば、遺伝子導入やノックダウンの手法を用いて因果関係を検証する。また、MYT1L高発現vs低発現、遺伝子導入・ノックダウンに伴う遺伝子発現の相違を検証し、MYT1Lに制御される遺伝子候補を抽出する。
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