研究課題/領域番号 |
25861259
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
工藤 琢巳 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (90632125)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / 腫瘍抑制因子 / cross talk |
研究実績の概要 |
我々は、RASSF3(Ras-Association-Domain Family 3)が、大腸癌細胞株、乳癌細胞株において腫瘍抑制因子として機能していること、肺癌細胞株における移動能の獲得と肺癌の転移に関与していることを報告した。本研究はRASSF3が脳腫瘍において、腫瘍抑制因子として機能しているか否かを検討するものである。 神経膠芽腫細胞株にRASSF3を過剰発現するとapoptosisが誘導され、RASSF3をsiRNA法により発現抑制すると紫外線照射による細胞死が抑制された。またRASSF3を過剰発現すると細胞周期がG1/S期で停止し、RASSF3を発現抑制すると細胞増殖が促進された。さらにRASSF3を発現抑制すると紫外線照射によって引き起こされるDNA損傷に対する修復が遅延した。以上の結果はRASSF3が神経膠芽腫においても同様に腫瘍抑制因子として機能していることを示唆する。 RASSF3の発現抑制が及ぼす影響を評価するため神経膠芽腫細胞株でRASSF3を発現抑制し、DNA microarrayを用いて全遺伝子の発現状況を評価し、RASSF3により影響を強く受ける遺伝子を抽出した。さらにIngenuity Pathway Analysisを用いてRASSF3の発現抑制により影響を受けるsignaling pathwayをいくつか同定した。現在これらの遺伝子変化をRT-PCR法を用いて確認するほか、さらにこれらの遺伝子をsiRNA法を用いて発現抑制し、表現型の変化を観察してる。siRNA法による遺伝子抑制が十分に効果が得られないものがあり、CRISPRi法を用いて発現抑制を行う系を確立している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いたRASSF3の機能解析は順調に行えている。特にmicroarrayを用いた遺伝子解析と、その結果をIngenuity Pathway Analysisを用いてnon-biasに、RASSF3との関連を示唆するsignaling pathwayを同定できたことが大きく研究を前進させたと考えている。更に、発現抑制を得るためCRISPRi法を既に確立した。siRNA法による発現抑制との結果を組み合わせることでより詳細に遺伝子発現変化による影響を評価することが出来るようになった。また、マウスを用いた脳腫瘍モデルを構築した。 脳腫瘍モデルを用いたRASSF3の機能解析がまだ行えていない。また臨床検体における発現解析についても検討が行えていない。 以上からおおむね順調に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
siRNA法およびCRISPRi法を用いてRASSF3との関連が示唆された遺伝子の発現を抑制し、RASSF3の表現系に及ぼす影響についての機能評価を行う。これらの細胞生物学的実験のほかに、動物実験及び臨床検体の解析を行う。RASSF3の過剰発現及びshRNAまたはCRISPRi法による発現抑制をした細胞株を用いてマウスの脳腫瘍モデルを作成し、腫瘍形成能、生存期間に及ぼす影響を評価する。さらに患者より摘出した膠芽腫におけるRASSF3及びその関連遺伝子の発現解析をRT-PCR法を用いて行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞を用いた実験の進行は、培養細胞の状態にかなり依存しており、そのため完全に計画通りには請求額を使用することは難しいため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額はわずかであるため、おおむね使用計画に変更はない。主に培養細胞実験の消耗品として使用する予定である。
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