研究課題
若手研究(B)
【目的】Tumor initiating cellで機能する分子としてNotchシグナルが抽出された。Notchシグナルはグリオーマ幹細胞においてその発生シグナルとして重要であるとされる。本研究では、いまだヒトがんに対して臨床応用されていないNotchの新規経口分子標的薬剤MRK003を使用しin vitroの実験結果から臨床応用への可能性を探った。【方法】3種類の膠芽腫幹細胞株 (TGS04, 30R, Me83)を使用し、それぞれのNotch受容体の発現を定量的RT-PCRで確認した。細胞株をMRKで処理しMTT assayにより細胞増殖能評価、Annexin Vを用いたフローサイトメトリーによりアポトーシス細胞の検出、sphere forming assayにより幹細胞形質評価を行った。また、MRK処理によるリン酸化型Aktレベルの変化をWestern blotで検証した。【結果】すべての膠芽腫幹細胞株で種々のレベルでNotchの発現を認めた。MRK のIC50はTGS04、30R、Me83の順に9.37μM、0.82μM、1.19μMと算出され、TGS04はMRKに低感受性で30R, Me83は高感受性であった。すべての細胞株でMRK濃度依存性にアポトーシス細胞が増加した。TGS04は、MRK>8μMでSphere個数の有意な低下が認められ (P<0.0001)、30RおよびMe83はMRK≧2μMでSphereがほぼ消失した (P<0.0001)。MRK処理後のリン酸化型AktレベルはTGS04で不変、30RとMe83では高度に低下した。【結論】膠芽腫幹細胞に対するMRKの有用性が示された。MRKによる膠芽腫幹細胞の細胞増殖抑制、アポトーシス促進、幹細胞形質の喪失効果はリン酸化型Aktレベルの低下が指標になる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
標的分子を決定し、治療への応用を考えて標的分子の阻害剤を使用した実験に着手しえた。
引き続き標的分子としての妥当性を評価する。
学会発表を行わなかったため旅費として計上した分を使用しなかった。次年度に使用する。
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J Neurol Sci
巻: 339 ページ: 87-90
10.1016/j.jns.2014.01.026.