虚血性脳血管障害患者における脳血流の評価は、脳梗塞発症を予見するために重要である。現在はガスPET検査にて脳血流の状態や脳神経細胞の活動状況を測定する方法が行われている。しかし、この検査は薬剤合成に高度な設備を要するため施行できる施設が限られており、検査時間も長く、点滴や採血が必要など患者への侵襲も大きいという欠点がある。そのため、より短時間、低侵襲で汎用性の高く、かつ正確に脳血流を評価できる検査法の開発が必要であった。私たちは国内で最も早く62Cu-ATSMという新しい薬剤に着目し、これの応用研究に取り組んできており、今までにこの薬剤を用いたPETが術前評価には有用である可能性を示してきた。 私たちは今までこの薬剤も含めた脳血流に関する研究成果を論文で発表してきたが、今回はこの有用性、正確性をさらに確立するために血流改善を目的とした手術を実際に行う患者を対象に術前、術後で62Cu-ATSMを用いたPETをおこない、その変化に着目した。また同時期に術前後でMMSE(記憶)、Trail Making Test(視覚探索と注意転換)、言語流暢性課題 (Verbal fluency task前頭葉機能検査)、Motor Impersistence Test(劣位半球症状)Rey複雑図形テスト(視覚的記名力)、注意検査(視空間無視)の6項目の高次脳機能検査を行い、これらのデータを解析して62Cu-ATSMを用いたPET検査がこれら複雑な脳機能の変化と相関するか、手術治療効果を示すことができるかなどを検証している。 この研究がスタートして約1年になるが、現在はこれらデータ収集をおこなっている状況であり、データ解析までは至っていない。26年度はデータ解析を中心に行う予定である。
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