脳血管狭窄または閉塞病変を有する患者さんでは脳梗塞を発症する可能性がある。内服治療も重要であるが、重度の脳循環障害では、バイパス手術などを追加する必要がある。現在、脳循環を評価できる最も信頼性の高い検査は15O gas & water PET検査である。しかし、この検査は行える施設が全国でも十数施設と限られているのが現状である。そこで、本研究ではより簡便な方法でこの脳血流を評価して、手術適応判断の一助にならないか検討した。 当初は62Cu-ATSMという低酸素領域を検出できるPET用薬剤を用いて行う予定であったが、実際には62Cu-ATSMの供給が安定せず、データ解析するための十分な症例数は得られなかった。そこで、当初よりバックアップとして収集していた、3T-MRIによるContinuous Arterial Spin Labeling(CASL)法を用いた脳血流データと15O gas & water PET検査で得られた脳血流データとを比較検討した。 13名の被験者に対してMRIとPET検査の両方を行い、得られた脳血流データで相関解析を行った。両側大脳半球の中大脳動脈領域にregion of interest(ROI)をとった。すべてのROIでの比較や健側と病側との比での比較など行うと統計学的有意な相関関係を認めた。しかし、症例ごとに値のばらつきが大きく、まだ十分な信頼性がないことも分かった。この結果より、MRIを用いたCASL法による脳血流評価は今後、15O gas & water PET検査に代わり得る有用な検査法の可能性が示唆されたが、その信頼性に関してはまだ十分とは言えず、撮像方法の改良などが必要と思われた。 今回の研究成果は2014年全国学会(第73回日本脳神経外科学会学術総会)にて発表した。
|