研究課題
栓子を用いたマウス一過性中大脳動脈閉塞により脳虚血再灌流障害を誘発させ、t-PA静注による出血性梗塞に与えるファスジルの影響を検討した。t-PA静注により出血量は増加したが、ファスジルとの複合治療は出血量を減少した。またファスジルは7日後の神経学的所見を改善し、死亡率も低下させた。そのメカニズムの検討では、ファスジルはeNOSを上昇させ、血管内皮をを保護していると考えられた。ヒト血管内皮細胞を用いて6時間の低酸素・低グルコース負荷を行い、t-PA投与およびファスジルとの複合治療における死細胞率を検討した。その結果、t-PA投与は明らかに死細胞を増加させるが、ファスジルとの複合治療では、その死亡率が改善した。そのメカニズムの検討のため、同じくヒト血管内皮細胞を用いて、低酸素・低グルコース処置後に細胞を回収し、ウエスタンブロットを用いてタンパク発現量を検討した。結果、t-PAはeNOSを減少し、ファスジルはその減少を抑制するとともに、t-PAによるMMP-9の上昇も抑制した。以上の結果から、ファスジルは血管内皮におけるeNOSの上昇ならびにMMP-9の抑制により、血管内皮を保護することにより、t-PAによる出血性梗塞を抑制していることが示された。以上の結果については、現在論文としてまとめている段階であり、今後英文雑誌へ投稿予定である。次にファスジルが脳出血を抑制しうるか、コラゲナーゼ誘発マウス脳出血モデルを用いて検討した。結果、ファスジルは10mg/kg投与で脳出血量が減少した。こちらは今後そのメカニズムを検討していく。
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