研究課題
一昨年度に当初の計画を達成し、昨年度より免疫抑制環境や腫瘍再燃に対応する新たな二つのCAR発現T細胞療法の開発を開始した。一つは免疫改変薬と呼ばれる近年臨床領域で有効性が認められたサリドマイド系の薬剤レナリドミドによるCAR発現T細胞の腫瘍免疫能の強化である。インビトロの試験においてレナリドミドを添加されたCAR発現T細胞は腫瘍特異的な活性の増強と殺細胞効果の増強を示した。続いてマウスグリオーマモデルを用いたインビボ試験によって、CAR発現T細胞とレナリドミドの併用療法を行った治療群において、CAR発現T細胞単独治療群をしのぐ治療効果を示した。研究成果を論文にて報告した(Kuramitsu S, Ohno M et. al., Cancer Gene Ther. 2015 Oct;22(10):487-9)。腫瘍は免疫回避の手段として腫瘍特異抗原の非発現化がある。そのため我々はもう一つのプロジェクトとしてグリオブラストーマに発現する新たな腫瘍抗原に対するCARの開発を行った。これによりたとえグリオブラストーマに発現するEGFRvIIIが減弱しても、新たな腫瘍特異抗原に対するCAR発現T細胞の投与により腫瘍特異的な腫瘍免疫の持続が可能となる。我々はグリオブラストーマに強く発現するポドプラニンに着目した。Duke大学のBigner教授との共同研究のもとモノクロナール抗体NZ-1の供与を受けこのCARを作成した。NZ-1CAR発現T細胞はポドプラニンを発現するグリオブラストーマ細胞株においてインビトロにおいて腫瘍特異的な殺細胞効果を示し、またマウスグリオーマモデルを用いたインビボ試験においてマウスの生存期間を延長した。結果を論文にて報告した(Shiina S, Ohno M, et. al.,Cancer Immunol Res. 2016 Mar;4(3):259-68)。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件)
Cancer immunology research
巻: 4 ページ: 259-268
10.1158/2326-6066.CIR-15-0060
Cancer Gene Therpy
巻: 22 ページ: 487-495
10.1038/cgt.2015.47