研究課題
若手研究(B)
オスのSD ラット(270-320g)の左内頚動脈先端部をナイロン糸にて血管内より穿通させることによりくも膜下 出血(SAH)モデルを作成し、30分後にvehicle(リン酸緩衝生理食塩水)または血小板由来増殖因子(PDGF)受容体阻害薬イマチニブ(高容量、低容量の2 dose)を腹腔内投与した。Sham群では同様の手技を行うが、内頚動脈に挿入したナイロン糸を穿通させずに回収した。SAH後24時間及び72時間の時点で盲検的に神経学的所見、Western blot法による各種蛋白(MAPキナーゼ[ERK1/2、JNK及びp38]、PDGF受容体[α、β及びリン酸化受容体]、テネイシンC、cleaved caspase-3)の発現変化、免疫組織学的評価、TUNEL染色を施行した。その結果、SAH後の大脳では広範にPDGF受容体が活性化され、neuropilにテネイシンCが発現することや、カスパーゼ依存性の神経細胞アポトーシスが生じることが明らかになった。イマチニブによるPDGF受容体の活性化抑制は大脳におけるテネイシンCの発現を抑制し、神経細胞、血管内皮細胞、グリア細胞におけるMAPキナーゼの活性化を抑制し、結果的に神経細胞のアポトーシスを抑制した。また、神経細胞アポトーシスの発生抑制により、くも膜下出血後の神経学的所見は有意に改善した。これらの成果は、マトリセルラー蛋白テネイシンCがSAH後の早期脳損傷において重要な役割を果たすという我々の仮説を支持するものである。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通りに研究は順調に実施できており、仮説を支持する有望な研究成果を得ている。
引き続き、計画通りに研究を実施する。本年度に得られた研究成果がテネイシンCの発現抑制によるものか、その他の機序によるものか、明白にするために、イマチニブによる脳保護効果を合成テネイシンC投与により拮抗できるか検討する。また、テネイシンCの機能的作用発現機構等を各種受容体拮抗薬などを使用し探索する予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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