研究課題
本研究は、中枢神経系における内在性幹細胞ならびに、移植された外来性幹細胞が、電気刺激により、その生存・分化・遊走にどのような影響を与えるか を評価することを主目的としている。25年度は脳梗塞モデルラットを作製し、他家骨髄幹細胞を脳内移植・経動脈移植・経静脈移植して、行動学的・組織学的に評価し移植時期による治療効果の差異を明らかにした。また、脳梗塞モデルラットに対する電気刺激治療の治療効果を確認した。26年度は脳梗塞モデルラットを作製し、その病側大脳皮質硬膜外に電気刺激を、健側大脳皮質・脳梁部に脳実質内蛍光標識骨髄幹細胞移植を行った。1週間持続刺激を行うことで細胞生存・分化・遊走の変化を確認したところ、患側への遊走が増加していた。ただ、1週間では遊走距離が短いため、2週間以上の持続刺激を現在も施行していて、より大きい差異が得られつつある。生存率については、これまでのところ有意差が得られていない。また分化能についても、そもそも骨髄幹細胞を用いているので、これも神経系細胞への分化が大幅に増幅された ということは認められていない。27年度は、内在性神経幹細胞の変化をみるために、BrdUを用いた増幅細胞のラベルを行い、脳室下帯からの神経幹細胞の増幅・遊走・神経系細胞への分化がどのように変化するかを見る。また、当初から行っていた移植細胞の遊走について、chemoattractantに作用するものが果たして何であるかを免疫染色で同定し、その後、この中和抗体の同時投与により電気刺激による細胞遊走増強効果がどの程度抑制されるかを確認する。
3: やや遅れている
初の予定よりも遅れはあるものの、モデル作製・細胞移植・電気刺激 がいずれも安定して行えるようになっている。25年度は、特に経動脈細胞移植について掘り下げた研究ができ、関連・派生した研究として、学会発表を行うことができた。26年度現在、本研究についてはRevision後再投稿しており、publicationに向かっていくと考えられる。また、Epilepsyに関連した神経再生の総説を完成させている。26年度は、脳神経外科学会の英文機関誌にパーキンソン病に対する再生医療の総説を掲載することができた。また、本研究とも関連するが、パーキンソン病モデルラットに対する脊髄刺激の治療効果に関する論文を指導的立場で仕上げることができた。26年度の研究業績を当初の研究計画と比較すると、signalingの解析のための研究まではたどり着けていないことから、やや遅れているが、これは、当初の計画では1週間の持続刺激でおそらく細胞遊走などについて充分な差異が得られるのではないかと考えていたが、2週間以上の持続電気刺激の方が良いという結論に至ったため、研究のプロトコールが単純に倍以上に延びたことが最も大きく関与している。ただ、一度系が確立されるとデータの蓄積は早いため、来年度にはある程度追いつくことができるとも思われる。これらを総合して考えると、達成度としては、27年度までの予定を100%とした場合、50%程度は到達できたと考えている。
当初の研究計画通り、脳梗塞モデル動物における硬膜外電気刺激治療を行い、それによる内在性神経幹細胞の分化・遊走の変化を詳細に検討する。また、内在性神経幹細胞が電気刺激により、果たしてどのようなシグナリングが関与して、その生存・分化・遊走に影響を与えられるのか、細胞接着因子・ケモカイン・低分子量Gタンパク質などに着目して明らかにする。同様にパーキンソン病モデルや、当初の研究計画にはなかったが、神経新生と非常に密接な関係にある疾患であるうつ病についても焦点をあてて、電気刺激や細胞移植治療の影響を評価する。また、最も重要なことの一つとして、研究会や学会での発表・論文執筆による報告 があげられるが、これを特に充実させて、国内外へむけて情報発信できるようにする。
すべて 2015 2014
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