研究課題
若手研究(B)
未破裂脳動脈瘤が発見された場合、現在有効な薬物治療はない。また、脳動脈瘤の形成と破裂の病態は異なる可能性がある。そこで、再現性良く、高頻度に脳動脈瘤破裂をきたす動物モデルを確立すること、脳動脈瘤破裂の病態を解明し、脳動脈瘤破裂予防の薬物治療評価を行うことを目的として本研究を行っている。雄性マウスに高血圧を誘導し、脳槽内にエラスターゼを単回注入することによって、脳血管の内弾性板を破壊し、脳動脈瘤形成を経て、高率に破裂するくも膜下出血モデルを用い、ヒドララジン(血管拡張薬)を投与し血圧を正常化することにより、脳動脈瘤破裂を抑制した。さらにカプトプリル(アンジンテンシン変換酵素阻害薬)およびロサルタン(アンジオテンシンII受容体阻害薬)は血圧と独立して、脳動脈瘤破裂を抑制した。これらの結果は高血圧の治療、局所レニン-アンジオテンシン系を抑制することが脳動脈瘤破裂抑制に重要であることを示し、論文をStrokeに投稿、受理されている。現在、卵巣摘出によるエストロゲン欠乏状態を誘導した雌性ラットを用いて、脳動脈瘤を誘導したモデルもしいている。これを改良し、脳動脈瘤の破裂率を上昇させる検討を行っている。肥満細胞脱顆粒剤であるcompound 48/80 (C48/80)の投与は脳動脈瘤破裂率を上昇させなかったが、高ホモシステイン血症を誘導すると脳動脈瘤破裂を促進することができた。別の薬剤や脳血管への血行力学的負荷を変更することによって、破裂率を上昇させることが可能かを検討している。このラットモデルは脳への直接的侵襲を加えていない点が利点である。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度の主な目的は、脳動脈瘤破裂モデルの確立であったが、徐々に脳動脈瘤破裂率が上昇している。脳血管壁への炎症や血管壁を脆弱にする薬剤を投与し、さらに脳動脈瘤破裂が高率に生じるかを検討中である。モデルが確立後には病態の解明および薬物投与を行い、臨床応用が可能かを確認する。
下記の計画を実施し、脳動脈瘤破裂の誘導および分子機構の解明を行う。1) 卵巣摘出ラット脳動脈瘤モデルにコラーゲンおよびエラスチンの架橋結合を特異的に阻害するbeta-aminopropionitrile (BAPN)を300mg/kg/dayの量で皮下投与を行う。同薬剤は腹部動脈瘤を破裂することが報告されている。また、micro-positron emission tomographyによるF-fluorodeoxyglucose (F-FDG)の集積を検討し、脳動脈瘤破裂を予測できるか検討する。MRAによる脳動脈瘤の経時的変化も観察を行う。2) 脳動脈瘤破裂モデルが確立された場合は、脳動脈瘤形成抑制作用が認められたMineralocorticoid受容体拮抗薬であるeplerenone、ARBであるolmesartanなどを投与し対照群と比較する。
平成26年3月納品となり支払いが完了していないため、次年度使用額が生じた。平成26年度4月に支払い予定である。
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Stroke
巻: 45 ページ: 579-586
10.1161/STROKEAHA.113.003072
Hypertension
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