本研究は、血管新生阻害剤が悪性神経膠腫の腫瘍幹細胞性破綻に与える影響を解明することで革新的な膠芽腫治療の開発を行うことを目的としている。以下、本研究の研究計画に沿って最終年度の研究進渉状況および研究成果について記載する。まず、H25年度にヒト膠芽腫細胞株(T98G、U251)およびヒト悪性神経膠腫摘出組織由来の初代培養細胞株を用いて樹立したOct-3/4遺伝子を過剰発現させた細胞株(GB/Oct-3/4)を用いて、悪性神経膠腫の治療抵抗性に関わる因子(浸潤能、遊走能、血管新生能、薬剤耐性能)についての評価を行い、Oct-3/4が悪性神経膠腫の治療抵抗性に関与している事実を明らかにした。さらに、同細胞株より自己複製能、多分化能、腫瘍形成能を有するOct-3/4陽性の腫瘍幹細胞を単離し、NOD-SCID mouseを用いたin vivoにおける細胞動態を解析すると、Oct-3/4陽性細胞は腫瘍辺縁部分に局在して存在することが明らかになった。なお、同部位ではHIF-1αおよびVEGFなどの血管新生因子の発現性が高いことも明らかとなり、血管新生阻害を行うことが腫瘍幹細胞の幹細胞性破綻につながる可能性が示唆された。さらに、H26年度よりOct-3/4のPI3K/AKT経路を介したHIF-1発現誘導機構への関与を検討致したところ、AKT阻害剤を使用することでHIF-1発現が低下することがわかり、Oct-3/4のHIF-1発現誘導機序にはAKTが関与している可能性が示唆された。そこで、in vivo光イメージングにて細胞動態解析を詳細に行い、Oct-3/4陽性細胞の血管新生機構への関与を検討したところ、血管新生阻害時における同細胞の細胞浸潤動態が明らかとなった。
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