研究実績の概要 |
1)カイニン酸投与後の海馬電極による脳波解析: C57BL6およびN-Shc-/-マウスに対し、麻酔下に開頭後、定位的に海馬CA3領域に単極電極を留置、固定を行った。電極留置術後1週間後にデジタル脳波計に接続し、カイニン酸(KA)投与前30間、KA腹腔内投与(30mg/㎏, i.p.)後から2時間の脳波記録を行った。棘波や鋭波のてんかん性発射を視察にて計測した。KA投与前は両郡ともに明らかなてんかん性発射は認めなかった。KA投与後、両郡ともにてんかん性発射を観察できたが、振幅、頻度ともにN-Shc-/-マウスで低かった。てんかん性発射の頻度は、投与直後から1時間後ではC57BL6マウスが平均5642.8±1210回/hに対し N-Shc-/-マウスで平均1046±971回/hと有意に低かった(p<0.001)。1時間後から2時間後では、C57BL/6マウスが平均8040±1573回/hに対しN-Shc-/- マウスで平均981.5±1048回/hと有意に低かった(p<0.001)。KA投与後の海馬からのてんかん性発射はN-Shc-/- マウスで抑制されることが解った。 2)KA、TrkB関連タンパクwestern blot: C57BL/6およびN-Shc-/-マウスの脳を摘出し、大脳皮質、海馬、視床組織に分けwestern blotを行い、TrkBレセプターおよびNShc、カイニン酸レセプター(KA1, KA2)、グルタミン酸レセプター(GluR6)の発現を調べた。N-Shc-/-マウスではN-Shcタンパクの発現を認めなかった。両郡にてTrkB、KA1、 KA2、GluR6の発現に差はなかった。NShcタンパク欠損に伴うTrkB、KA1、 KA2、GluR6の発現に影響はなく、N-Shc-/-マウスへのKA投与後の効果がNShcタンパク欠損によりもたらされると考えられた。
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