研究課題
本研究の目的は、超高磁場7テスラMRIを用いた脳腫瘍低酸素イメージング手法の開発であり、研究期間内ではそのための基礎技術の確立を目指した。前年度では、7テスラMRIによる高分解能な定量的磁化率マップ(QSM)の取得が可能になり、それに伴い細かい静脈の抽出も可能となった。最終年度では、このQSM画像の静脈情報を基に脳循環代謝のパラメータの一つである脳酸素摂取率(OEF)の算出、及び悪性脳腫瘍患者に対する7テスラMRIの撮像に取り組んだ。最初に、QSM-OEFの精度を評価するために、血行力学的脳虚血患者におけるPETのOEFと比較した。これは、貧困灌流を示す領域ではOEF上昇を示すことから、脳虚血患者のPET-OEFを基準とすることで本手法の精度検証が可能なためである。方法は、慢性期片側性主幹動脈狭窄・閉塞患者31例を対象とし、7テスラMRIとPET撮像を行った。ROIは左右大脳半球を計測し、QSM-OEFの患側/健側比をPET-OEFと比較した。結果はQSM-OEFとPET-OEFの患側/健側比における相関係数は0.7と良好な相関が認められた。このことから本手法はMRIによるOEF計測法として有望であると考えられた。一方で、QSMは鉄沈着や石灰化、出血など、磁化率変動を生じる部位ではOEFの算出エラーが生じる場合があり、今後はこれらを除去する手法の開発を進める予定である。また、前年度の終わりから悪性脳腫瘍患者の撮像を開始したが、7テスラMRIにて撮像可能な患者がほとんどなく、FRPのPETが撮像できたのも2名だけであった。現時点ではFRP-PETの高集積部位(低酸素領域)で高QSM値を示す傾向が見られるが、本手法の解析結果と低酸素領域や悪性度との関係性を明らかにするには症例数が足りない状況である。撮像は研究期間以降も継続しており、目標数に達し次第解析・評価を行う予定である。
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Journal of Neuroimaging
巻: 未定 ページ: 印刷中
10.1111/jon.12192
Magnetic Resonance in Medical Sciences
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10.2463/mrms.2014-0004
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