研究課題/領域番号 |
25861289
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
渡邊 潤 昭和大学, 遺伝子組換え実験室, 助教 (50649069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 頭部外傷 / 高次脳機能障害 / 骨髄間葉系幹細胞 / TSG-6 |
研究実績の概要 |
頭部外傷(TBI)は交通事故や高所からの落下などにより引き起こされる神経外傷性疾患であり、急性期の死亡や全身性機能不全を免れても、慢性期に認知障害や情緒障害のため社会適応障害(高次脳機能障害)が顕著となる症例が多く報告されている。 申請者は、骨髄間葉系幹細胞(MSCs)から分泌される組織保護性タンパク質、TNFα stimulated gene/protein6 (TSG-6)を脳外傷モデルマウスに投与した結果、外傷性脳損傷の抑制に加え、記憶障害と鬱様行動が改善されることを明らかにした。またこの時、好中球の障害部位への浸潤と、血液脳関門の崩壊が抑制されていた。さらに海馬における神経新生を調べたところ、TSG6の投与によって新生ニューロンのマーカーであるDCX陽性細胞が有意に増加していた。以上の結果からTSG-6は神経障害の抑制、さらに神経新生の促進の両面から頭部外傷を改善していることが明らかとなった。 また新しく確立したMRIを用いた脳障害の評価法によってMSCの2回静脈投与が神経障害を顕著に抑制することが明らかとなった。またこのとき静脈投与されたMSCの大部分は肺にトラップされ、障害部位である脳にはほとんど到達していないことが分かった。このことから肺にトラップされたMSCは何らかの障害シグナルを受け取りTSG6を分泌し、それが脳に到達することによって神経障害を抑制している可能性が示唆された。また、このMSCが分泌しているTSG-6のタンパク質量は外部から投与して有効な効果が得られる量に比べて極めて少量であることが明らかとなり、MSCはなんらかのタンパク質輸送システムを持っていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者が当該年度から昭和大学医学部解剖学講座から昭和大学共同施設遺伝子組換え実験室へと移動になったことから研究外の仕事を新しく覚える必要があり、予定通りに実験を進めることが出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究により、MSCはタンパク質やmiRNAなどを効率よく障害部位に輸送する何らかのシステムを持っていることが予想された。今後はそのシステムを明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者が当該年度から昭和大学医学部解剖学講座から昭和大学共同施設遺伝子組換え実験室へと移動になったことから研究外の仕事を新しく覚える必要があり、予定通りに実験を進めることが出来なかった。また参加・発表した日本解剖学会総会・生理学会大会合同大会が三月末開催であったため、大学のシステム上その旅費の申請を来年度に行う必要があった。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度の研究により、MSCはタンパク質やmiRNAなどを効率よく障害部位に輸送する何らかのシステムを持っていることが予想された。今後はそのシステムを明らかにしていく予定である。未使用額は動物購入費・維持費・試薬代と論文準備・学会発表に充てることにしたい。
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