研究課題
間葉系幹細胞は、成体のさまざまな間葉組織から採取可能であるが、滑膜由来の間葉系幹細胞(滑膜幹細胞)は、自己血清を用いた培養での増殖能が高く、軟骨分化能が高いことから、軟骨再生や半月板再生に対する有用な細胞源となる。当施設では軟骨損傷に対して自家滑膜幹細胞を軟骨欠損部に移植する新たな治療法を開発し、良好な成績を得ている。しかし、移植用細胞を分離・培養するための施設としての高い基準を有した細胞加工施設は国内でも限られており、多くの施設で我々の開発した治療法を普及させるためには、滑膜組織や分離した幹細胞を適切に保存し輸送することが必須となる。以上より、本研究課題では、手術後に採取された滑膜と分離した幹細胞を搬送するための保存・移送条件の最適化を試みた。人工膝関節置換術時に切除された滑膜組織を検体材料とした。本年度は、滑膜組織から得られた滑膜幹細胞の保存条件を最適化するために、初年度、昨年度に検証した条件を基盤として温度条件と保存液の検証を行った。滑膜幹細胞を乳酸リンゲル液または100%ヒト血血清に4℃、13℃、37℃で48時間保存した後に、細胞生存率、コロニー形成能、軟骨分化能の評価を行った。結果、細胞生存率、コロニー形成能、軟骨分化能いずれもヒト血性、13℃での保存が最も適していることが分かった。現在、得られた成果を論文として作製準備をしている。さらに一昨年度に研究代表者が所属する研究チームは、これまで培ってきた技術を臨床的に応用するため、滑膜幹細胞の総合的な細胞操作技術を特許化した(特許 第5656183号:滑膜由来間葉幹細胞(MSCs)の軟骨・半月板再生への応用)。今回の研究により得られた知見と特許化した技術を統合することにより、多くの患者への適応を前提とした再生医療の基盤技術を確立できるものと期待される。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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