研究概要 |
平成25年度はまず、in vitroでの実験を中心に行った。Fucciを導入したヒト骨肉腫細胞株143Bに、まず1mM,2mM,5mM,のシスプラチンを継続的に作用させ、蛍光顕微鏡のタイムラプス機能を用いて経時的に観察した。5mMでは数時間後にはすべての細胞が緑色(S-G2期)となって細胞周期が停止し(G2 arrest)、その後は赤色(G1期)へ移行すること無くapoptosisを生じながらすべての細胞が死滅した。2mMではG2 arrestを起こすまで時間が長く、18時間程度でほとんどの細胞がG2 arrestを生じ、約40時間を過ぎてからapoptosisを生じ始めたたが、最終的には72時間後には大多数の細胞がapoptosisに陥った。1mMではG2 arrestを生じるものの、その後に細胞周期が再び回転し始め、増殖を再開する細胞も散見されるようになった。 次にシスプラチン2mMの濃度で、作用時間を少なくし6時間のみ作用させた。すると18時間程度で一旦ほとんどの細胞がS-G2期に移行するが、24時間後にはG1期に移行する細胞が散見されるようになり、そこからゆっくりとG1期に移行する細胞の数が増えて、その後は通常の細胞増殖スピードに戻っていった。 またカフェインによる抗癌剤増強作用を細胞周期の観点から解析した。2mMのシスプラチンを6時間作用させた後に培養液を交換してカフェインを添加した。すると、カフェインを添加することでG1期への移行までの時間が早まり、最終的には多数の細胞が細胞周期に関係なくapoptosisに陥っていった。これはカフェイン無しでは見られなかった変化であり、シスプラチンでDNA損傷を受けた骨肉腫細胞がDNA損傷を修復させる前にカフェインによって強制的に細胞周期を回されるために細胞死に陥るという我々の仮説に一致した結果であった。
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