研究課題
平成26年度は、平成25年度に行ったin vitroでのシスプラチンを用いた実験と同様の実験を、同じく骨肉腫のkey drugであるドキソルビシンを用いて行った。FUCCIを導入したヒト骨肉腫細胞株143Bにドキソルビシンを5μMで3時間作用させ、その後に蛍光顕微鏡で72時間のタイムラプス撮影を行った。ドキソルビシンを作用させて24時間以内にG2 arrestが生じ、その後に一部の細胞のみがG2 arrestを離脱しmitosisの後にアポトーシスに陥った。またごく一部の細胞はmitosisを起こすことなくG1期へ移行し、通常の細胞周期へと戻った。mitosisはドキソルビシンを作用させた細胞の生存率と有意に相関しており、また同様にドキソルビシンを作用させた際のmitosisからG1期への移行も細胞の生存率と有意な相関を認めた。ドキソルビシンを作用させた時点の細胞周期と細胞の生存率には有意な相関はなかった。ドキソルビシンに反応させる前の細胞は約60%が赤色(G1/G0 phase)で約40%が緑色(S/G2/M phase)であったが、ドキソルビシンに作用させることでほとんどの細胞がS/G2/M phaseで細胞周期を停止させた。ドキソルビシンではmitosisの後にすぐアポトーシスが起こったが、これは昨年度に行ったシスプラチンの反応とは少し異なり、シスプラチンではmitosisが起こりきる前にアポトーシスが生じた。平成25年度・26年に行ったin vitroの実験からは抗がん剤への反応性・抵抗性が培養細胞においても個々の細胞において異なっており、骨肉腫細胞のheterogeneousな性格が表れていた。このような抗がん剤耐性の細胞をFUCCIでmonitoring・targetingできれば、今後の研究で新規治療薬剤の開発にもつながることが期待できる。
3: やや遅れている
本年度はドキソルビシンを用いた実験のほかに、シスプラチン・ドキソルビシンを併用した効果的な投与方法・組み合わせなどについて検討する予定であったが、ドキソルビシン単剤での実験のみとなった。本実験はタイムラプスでの撮影が必要であり1回の実験で約4日間タイムラプス機能付きの蛍光顕微鏡を独占することが必要である。このような実験系のため、他の蛍光顕微鏡使用者との兼ね合いもあり実験回数が制限されたことが実験が遅れた要因になった。
これまでの研究で、シスプラチンとドキソルビシンそれぞれの抗腫瘍効果と細胞周期のタイミングなどの関係が明らかになった。今後は、骨肉腫に対するkey drugであるこれら2剤の組み合わせ方法・タイミングについてFUCCIを用いたリアルタイムイメージングの手技を活用しながら解析を進める。臨床応用を考え、副作用を軽減すべくできるだけ低濃度で効率的な効果がでるような投与方法を探索するつもりである。またそのような投与方法がin vitroで確立できれば、in vivoでの実験にも発展させていく予定である。
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Cell cycle
巻: 14 ページ: 621-629
10.4161/15384101.2014.991604.