研究課題/領域番号 |
25861302
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
彌山 峰史 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (60362042)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脊柱靭帯骨化 / 骨芽細胞 / 内軟骨性骨化 |
研究概要 |
脊柱靭帯骨化症では内軟骨性骨化過程により骨化巣は形成され、靱帯組織と骨組織の間に存在する骨化前線における細胞分化が重要と考えられる。本研究では、ヒト脊柱靭帯骨化症(後縦靭帯、黄色靭帯)の手術時に採取した靭帯組織について、病理組織学的検討、培養靭帯細胞の特性について解析することが目的である。 実験方法として、組織学的評価を行うために骨化靱帯を脱灰固定して薄切標本を作製し、骨化前線部における軟骨細胞、骨芽細胞を分化誘導する転写因子、シグナル伝達について免疫組織化学的に観察を行った。その結果では、骨化前線の石灰化前線には分化した軟骨細胞が集簇しており、これらの細胞が成長因子や転写因子を介する細胞分化に中心的な働きを果たしていることが示唆された。これに対して、比較対象群の非骨化靭帯組織では、骨化形成、促進をもたらすこれら因子の発現はほとんど認めなかった。 また、脊柱靭帯細胞よりExplant法にて細胞を遊走させることで培養靭帯細胞がえられることが確認できた。実験を行う上では細胞数が必要であり、そのための細胞継代を行うことで、培養細胞の特性が変化しないかどうかについての検討を重ねている。これらの結果をふまえ、本研究課題であるマイクロRNAの網羅的解析にむけて準備を進めている段階である。 以上より、骨化前線部の骨芽細胞、軟骨細胞の分化・誘導は転写因子やそれに伴うシグナル伝達を介して行われており、骨化の調節・制御に大きな役割を果たすと考えられた。靭帯骨化を促進させるシグナル伝達と関連するマイクロRNAの解析について、実験を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脊柱靭帯骨化症の骨化前線部の組織学的検討については、HE、Safranin O、Toluidin Blueなどの一般的な染色法にて観察を行った。また、骨化巣の細胞分化を誘導するRunx2、Sox9、Msx2や、組織骨化に深く関連することが指摘されているWnt/βcatenin経路やIndianhedgehog経路といったシグナル伝達について免疫組織化学的染色を行い、その発現の強弱と局在を観察することができた。 細胞培養実験については培養細胞の獲得方法の確立が必要であり、その基礎的な準備をすすめている。したがって、骨化靭帯より得られる培養細胞の特性についての解析はやや進行が遅れている。今後、鋭意研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究を進めていくにあたり、靭帯組織からの初期培養細胞の獲得は可能となっている。現在、細胞継代を重ねた際に培養細胞の特性が変化しないかどうかについての確認実験を行っている。今後、採取した培養細胞に対して、骨化靭帯に特徴的なシグナル伝達やマイクロRNAの関与について実験を進めていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の研究課題の遂行には、脊柱靭帯組織からの培養細胞の採取、獲得が必要である。本研究はヒト脊柱靭帯骨化症の手術にて得た組織を使用するというものであるため、採取できる組織が限定されるうえ、組織が採取できる時期や数には不確定な要素が存在する。 現在では、実験を進めるための基礎的準備は徐々に整ってきており、次年度使用額を含めて、本研究課題を遂行していく計画である。 次年度使用額は、本研究の目的であるマイクロRNA解析に使用する計画である。マイクロRNA解析については培養靭帯細胞を使用する予定であるが、現在は実験を行うために培養細胞の準備を進めている。今後、およそ5症例の組織標本を、次年度前半に獲得したのち、研究を進めていく予定である。さらに、本研究を継続して行うための実験機材や薬品の購入にも次年度使用額を使用する計画である。
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